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 そんなある日のことだった。
 そろそろ予定では3人が帰還する日が近づいていたので俺は、カルパにお願いして、火影様に任務の進行状況を聞いてくるようにとお使いにだしていたのだった。

 何時もカルパと遊んでいたイルカは最初カルパがいないので
「クオちゃー、こぉーちゃーどこいくの?」
と、俺に聞いて来た。
「ぅん? 劫? 彼はねちょっとお使いに行ってもらっているんだよ。だから帰ってきたら遊んでもらってね。」
と答えてやると俺はこのお留守番の間ちっとも見つからない俺の帰り方のヒントになりそうな書物にまた眼を通し始めた。
 イルカ達は俺がまだ構ってくれないと早々に見切りをつけて2人で森の中に遊びに行ってしまった。
 俺は書物を読みながらも2人の気配を感じ取ることは忘れなかった。
 2人の様子は相変わらず何時ものようだった。
 また、結界の外からの来訪者もまだのようだった。
 まさか1q以上も先から探られていると思わないので大概ココにやって来る手合いは俺の感知網の内に入ってから気殺をするのでそいつらをトレースするのはとても簡単だった。

 別に俺は油断をしていたつもりではなかったが俺は、その違和感を見逃してしまったのだった。
 今思えばその時俺は何かを感じたわけではなかったのだが何故か首を捻っていたのだった。

 そう俺は、2人を見送った後、書物に目をやる一瞬ふと何かが引かっ方ような気がしてその首を捻ったのだった。
 その瞬間俺は感知範囲内の違和感を疑ったのだったがはっきりとした違和感を拾う事が出来ずにその時は気のせいか?と思い深く考えずに書物を読む事に戻ってしまったのだった。

 今回はカルパがいなかった為なのか思いのほか2人が遠く結界の境目付近まで足を伸ばしているのが感じられた。
 ちょっと際どかったので俺は念の為彼らの周りの様子を念入りに探ってみた。
 しかし、その時は違和感を感知する様なことはなかったのだった。

 暫くの間は2人は結界のギリギリ内側で遊んでいたのだった。
 俺は一瞬不安に駆られて2人を呼びに行こうかとそう思った時。
 イルカが結界外にかけだして出て行ってしまったのだった。
 どうやらイルカの気を引く何かがあったようだ。
 その後を追うようにカカシもすぐに外に出てそしてそこに結界が存在する事に気が付き慌ててイルカを連れ戻そうとしたその時、2人の側に不意に生まれた違和感に俺は慌ててその場を飛び出した。
 迂闊だった。そうとしか言えないそんな状態だった。
 まさか、1q以上も先から気殺してやって来るようなヤツがいるとは思わなかった。
 今までの奴らの行動からそう高をくくってしまったのだろうか?
 そうとしか言えない落ち度だ。
 絶対はないのに、知っていたはずだったのに、2人が幸せそうに遊んでいるのを見ているうちにそれに毒されたのか、この時代は戦国の世だと言う事を失念していた。
 とんだ平和ボケもいい所かもしれない。
 と、悔やむに悔やみきれない思いを抱えながら俺は命一杯の早さで2人の元へと急いだ。

 不意に生まれる上忍なみの殺気に、竦みながらもイルカを守ろうと勇気を奮いたたせているカカシと、その殺気に気押されて尻もちをつきまったく動けないイルカ、そして今にも2人を殺さんばかりの殺気を振りまき2人に一歩、また一歩と近づいてゆく相手。
 その様子を感じ取りながら俺は相手にばれないようにとことんまで気殺をして急いだのだった。

 俺が現場に辿り着いた時には、小さい俺がイルカを守らんと叶わないまでも果敢に相手に戦いを挑んでいた。
 そんなカカシに疲弊したのか、そいつはカカシを殺して腰を抜かしているイルカを連れて行こうと決めたように、その剣を振りおろそうとしている所だった。

 カカシは死を覚悟したのだろうかそれでも一矢報いようとその小さな手に持ったクナイを振っていた。
 そんな状態を見たイルカがカカシを守ろうと今まで一歩も動けなかったのにその小さな手で一生懸命印を切りながらカカシに体当たりをしにかけだしているそんな所だった。

 相手もイルカのそんな行動に一瞬驚いたようだった。
 しかし、相手から感じるのは、出来ればいけどりできなければ殺してしまえと言う意思のようなものだった。
 瞬時に俺は2人とも殺されると思い相手の意を少しでもそげればとクナイを投げてまさに今切殺されようとしている2人を抱きかかえるようにその場をとび退った。
 しかし、クナイを投げただけでその剣の勢いを殺すことは出来なかった俺は、2人を助ける際に自分の利き腕を切られしかも、上手くイルカを庇う事が出来ずイルカの顔にその剣先をかすめてしまうと言う失態まで起してしまった。

 鼻梁を切られたイルカは痛がりはしたが泣きはしなかった。
 さすがに両親が忍だと、今がどういう状況なのかその場の雰囲気でわかるのか何かをぐっとこらえているようだった。
 そんなイルカの姿にすぐにでも切られた傷の治療に取り掛かりたかったので、俺はその時間を稼ぐために影分身を数体作りだし敵の牽制をさせた。
 その隙に彼の傷の手当てを本体の俺がしたのだった。
 切られた傷は痛いだろうにその瞳に涙を溜めてジッと我慢しているイルカ。
 少しでも傷の痛みが軽減するようにと痛み止めの効能もある傷薬を傷口に刷りこんだのだった。
 さすがにそれは痛すぎたのかイルカは暴れはしなかったがとっても痛がった。
 一応イルカの傷の手当てと止血だけすませると俺は、医療キットなどが入ったポーチを取り外して、子供の自分に向かって
「後の処置は任せて大丈夫だな」
と、どうしたらいいのか困り果てていたそいつに問いかけた。
 すると慌てたように首を縦にコクコクと振ると俺からそのポーチを受け取り、イルカの傷上にガーゼを乗せソレをテープでとめ始めた。
 ソレを確認したオレは緊急にカルパを呼びだすことにした。
「真名(まな)によって命ずる!! 我が呼び声に答え召喚に応じよ!!」
 俺がそう言うと目の前に突如としてカルパが現れた。
「劫(こう)、悪いが2人の護衛を頼む!!」
 そう俺が言うが早いが、劫は頷くやいなや本来の姿をして2人を守るようにその前に立ったのだった。
 そして手当てをし終えたカカシに向かって俺は
「いいか、カカシくんはイルカを守って劫とココに待機している事。それとこの丸薬が造血丸。こっちが痛み止め、これが熱さましだ。丸薬は砕いて飲ませて、量は半分程でいいから。もし、イルカくんに異常がみられる場合は、症状によってこれらをあたえてね。それから劫もしお前がみてこれらの丸薬じゃぁ対処しきれなさそうだったら、こいつらを連れて火影邸まで行け、いいな。後の事は頼んだよ。敵は俺に任せてね」
 そう言って俺は彼らがそれぞれ理解し了承したのを確認後、敵を倒す為に、また相手をココから少しでも遠ざける為に影分身と共に場所を移動させる尽力をした。


 相手もただおとなしく移動されはしなかったが、何とか相手から子供達の姿を隠せるほど移動させる事は出来た。
 その瞬間に影分身が倒されてこれ以上場所を移動させる事が困難にもなったのも移動がこれ以上出来なくなった要因の一つでもある。

 敵もなかなかの腕前の持ち主だった。
 俺はいまだに火影様より封印していただいた力を解放する事無く戦っていた。
 出来る事ならこの封印を解かずに何とかしたいと考えていたからだ。
 なぜなら、子供達と行動を共にしているからだった。
 特にカカシに俺のシンの姿を見せる事に何故かひどく抵抗を感じたし、またカルパより今日は今まで以上に時空の歪が揺らいで不安定だといわれていたのもあったのだった。
 出来るだけ子供の自分にその姿を見せたくないと思うのは見せてしまえば子供とはいえ、聡いのだ。
 そのほんの少しの情報から何かしら感じる事があると思う。
 下手をすれば俺が はたけ カカシ であると気付かれてしまうかもしれない。
 自分が自分だと認識される事が彼の未来にどんな影響を与えるのか計り知れないとそうも思うから俺はその戸惑いから今の姿で出来れば相手を仕留めたいと思っているのだった。
 やはり自分以外の他人に知られるのとはきっと訳が違うのだろう。
 何せ彼らは死ぬことが既に決められているのだから、何となく自分の本当の事を少しだけでも知っていてもらいたいと言うそんな自分の我儘な気持ちもあったに違いない。

 このままの姿で戦うにはちょっと・・・ かなり部が悪いかもしれない。
 それでも俺はどうしようも無いほど追いつめられない限りはこのままで敵と戦う事にした。
 運が良ければ無傷とは言えないが敵を葬る事が出来るかもしれないとそう思っていたのだ。



 今の手持ちの武器は、クナイに手裏剣、起爆札が数枚。それに撒き菱、ワイヤーと、時空間忍術に関する書物が一冊・・・。ま、書物は戦いに関係は無いか。後は、ココでは使い物にならない、口寄せの巻物が数本・・・以上。
 この少ない武器と己が忍術を駆使して何とかやり過ごすことにした。

 まっ、俺の凄いところは写輪眼だけじゃないって所を見せてやらないとね。

 ジッっとにらみ合うことしばし。
 時間だけがじりじりと過ぎて行く。
 ピーン、と貼られた緊張感が何とも心に心地よく、その緊張感に高揚感も増してゆく。
 いったい何時振りだろうか、この戦いに心躍るこの瞬間を味わえるのは。
 最近ではココまで拮抗した相手に逢えなかった。
 世が世ならコイツとは良きライバルになれるのではないだろうかと思えるほど心が震えるきがした。
 でも今は戦国の世。
 そんな悠長なことは行ってられない。
 平穏には程遠く。
 殺れる時に殺らなければ、後に仲間を危険にさらすかもしれない。
 信頼は裏切られるそんな混沌とした世の中なのだ。
 それを思うとちょっぴり残念にも思う。

 その緊張を壊すように鳥が一羽飛び立った。
 まるでそれが合図だったかのように、今まで睨みあったままでピクリとも動かなかった俺達は一気にその間合いを詰め互いの獲物で切り結んだ。
 俺はクナイだったが、スピードが早かったおかげで、相手の剣の懐に飛び込む事が出来たのだった。
 俺が懐に飛び込んできた事を確認するかしないかのうちに相手は後ろへと飛びのいた。
 俺は懐に飛び込むとクナイを薙いだ。
 しかし、相手が後ろへと飛び退ったのでクナイは空を切った。
 俺はクナイで空を切りながら更に相手を追い詰める為に思いっきり地を蹴って追撃をかけた。

 今度は相手の間合いに入る前に、その刀が襲い来たので、俺がその脚を踏ん張って、何とか剣の間合いの外でやり過ごした。
 今度は敵が急に踏み込みを止めた俺を切り捨てる為にもう一歩踏み込みながら剣を切り返してきた。
 俺はその剣の軌道をクナイを使って少しでも変えるよう別の軌道へと受け流した。
 その後、相手との距離をとる為に斜め後ろの木へと飛び退りながら手に持っていたクナイを投げ、その後に印を組んで、相手を追随させないように雷遁の術で俺の前方を放電させた。
 そして俺は後方にあった木の上に降り立った。

 結局相手は俺を追うことはせずその場で高度な印を組んでいた。
 その印は今までに見たことも無い印だった。

 その印をみた瞬間俺の本能が警鐘を鳴らした。
 俺は更に距離をとりながら地に降りた。








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