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 とそこに思いがけない相手が飛び出してきた。
 イルカと一緒にいると思われていたカカシだった。
 相手の術は完成し今まさに解き放たれたそんな時。
 カカシは俺に目もくれず敵に向かってもっていたクナイを投げた。
 俺は思わず
「バカ!! こんな所で何をやってる。待ってろっていっただろ」
と叫びながらカカシの元へ向かい敵の発動された術を何とかする為に、そして子供の俺を守る為に俺は掛けられていた封印を解き放ったのだった。

 放たれた敵の術は、炎のようにもみえるがどちらかと言えばマグマと言う感じだった。
 この術はもしかすると血継限界かもしれないと思った俺は咄嗟に土遁の術で大地に亀裂を開けそこにその溶岩を流し込んで何とか回避をした。


 敵もそうだが、カカシも俺の姿を見てその行動を止めてしまったのだった。
 2人の口から示し合わせたようにぼそりと
「・・・白い牙・・・」
「・・・父さん・・・」
と同じ人物をさす言葉が零れ落ちた。

 俺は苦笑いを浮かべながら
「ちが〜うよ」
と聞かれていないけれど答えたのだった。
 その配慮は主に子供の俺に対してだったのだがはからずとも敵にも聞こえてしまったようだった。
「バカな!? 嘘などついても無駄だ。その容姿・・・うわさ通りだ。ならば貴様が白い牙それに相違ない。・・・くっくっくっくっ。なんて俺はついているんだ。この任務で貴様と相まみえることは無いと諦めていたのに・・・、まさか姿を偽って稚児を守っていたとは・・・。そうとわかれば貴様を殺す。俺の名を上げる為に貴様には死んでもらう」
と、さっきの比ではないくらいの殺気を放ち今度は本当に殺す為に挑みかかって来た。
 相手の標的が子供から俺に移った事に一先ず安堵して、俺はカカシに
「邪魔だ!!! さっさと戻れ!!」
と簡潔に伝え敵を迎え撃つのではなく敵に向かって行ったのだった。
下手に迎えうって、そのとばっちりをこの子供に与えるわけにはいかなかったのだった。
 それに、写輪眼にはいまだに一抹の不安があったので、側に余りいて欲しくなかったのだ。
 今だ彼らは俺の左目が写輪眼だとは気付いていないようだった。
 俺は一撃で相手を仕留める為にその手にチャクラを集めだしたのだ。
 それは千の鳥が鳴くようなけたたましい音を奏で始めた。
『雷切!!』
 術を放つ瞬間俺は写輪眼を開き敵の急所めがけて突っ込んだ。
 しかしその技は、俺の写輪眼に驚きはしたが何とか俺の術を避けた敵の左肩から先を奪い去る事しか出来なかった。
 俺の目を見とがめた敵はそこで初めて驚愕をあらわにしてきたのだった。
「貴様、いったい誰だ・・・。 白い牙では無かったのか?」
 そう言うと奪われた肩から止めどなく流れる血を止める為に切り口を火遁で焼いたのだった。
「木ノ葉の忍で、白い牙以外に俺をココまで追い詰める手練がいるとは・・・貴様の名を聞きたい。我が名は・・・・・・」

 敵は俺の実力に敬意をもってそう名のった。
 俺はその名を聞き信じられない思いで一杯だった。
 その名は余りにも有名だった。
 その時代に生きた忍の中で一番強いと言わせた男の名だった。
 その死は突然でどうして死んだのかとか一切が不明のままだった。
 そんな相手に俺が傷を負わせることが出来たのは、相手が俺の写輪眼に吃驚したからという事情があったからだろう。
 そうでなければきっと殺されていたのは俺の方だったに違いない。
 俺は相手のその思いに答える為に本当の名をその口に乗せた。

「俺は・・・、カカシ。  はたけ カカシ だ・・・。アンタの様な有名な忍と戦えて光栄だね」
 そう答えた瞬間、ひと際甲高い声が叫んだのだった。

「嘘だ!!! はたけ カカシ は 俺だ!!! お前は誰だ!!!」

 その声を聞いた瞬間しまったと思った。
 一番知られてはいけない人間に知られてしまったと。
 俺はその瞬間敵の存在を忘れて、子供の俺の側に膝をついてその瞳を覗きこみ
「嘘じゃないよ。俺は、未来のお前なんだよ。だから・・・ごめんね。教えるつもりはなかったんだけどね・・・ほんとごめんね」
 そう言って俺は、俺の瞳を覗きこむ子供に写輪眼の力を使って俺と出会ってから、今までの記憶を全て封じることにしたのだった。
 俺の事を思い出すかもしれない要因をことごとく封印して、
 そして、カカシの中から記憶を消し終えると彼は体から力を抜いてその意識を手放してしまったのだった。

 その隙を逃す敵ではなく背後から容赦なく切りつけてきた。
 振り向いた俺は、しまったと思ったが、時すでに遅くせめてこの子だけでも無傷で助けようと、そして自分が傷つく事を覚悟してその切っ先から少しでも遠ざかろうと飛んだのだった。
 その瞬間、またしても写輪眼が暴走したのだった。

 それは、こちらに飛ばされる時に起こった現象と酷似していて、なおかつ此方に来た時に一度暴走した時の現象も起していた。
 その黒い小さなブラックホールのようなモノに敵が触れるとそこから吸い込まれるように体が千切れてのみ込まれていった。
「やばい!!」
 そう呟いた時、イルカを連れたカルパがやって来た。
 俺の状態をみたカルパは俺の側にいたカカシを自分の背へとイルカの後ろに乗せた。
 カルパの背に乗っていたイルカと目があった瞬間俺は咄嗟に暴走している写輪眼でイルカの記憶も封じたのだった。

 一応イルカへ及ぼうとしていた黒い歪はイルカを攻撃する前に視線をそらしたらそちらへと移動した。
 どうやらコレは俺の視線の先に現れるらしいと理解すると俺はまた敵をその視界にとらえたのだった。
 しかし、敵は先ほどの攻撃で既にこと切れてしまっていたのかぐったりとしていた。
 その穴は俺が左の目を閉じようが閉じまいが関係なく目の前で膨張し始めたのだった。
 とうとう、俺の支配下を離れて暴走が始まってしまったようだ。
 俺は念の為写輪眼を閉じながら、その膨張を続ける穴を見たまま
カルパに端的に告げた。
「子供の記憶を封じた。カカシが俺の正体知ってしまった為、思い出すかもしれない要因を排除した。暴走でこの先どうなるか分からないが・・・ 後の事はお前に託す・・・」

 そう俺が言う終わるか終わらないかの内に視線の先の穴の膨張が加速してそして俺を飲みこんだのだった。
 すでに俺は、イルカに写輪眼を使用したことによりチャクラが底をついていて、その術の暴走をどうすることも出来なかったのだった。


 黒い穴に俺がのみ込まれる瞬間、カルパの声を聞いたような気がした。





 俺が目を覚ますとそこは木ノ葉病院の病室だった。
 俺の傍にはイルカさんが俺を心配そうに見ていた。
 俺が眼を開いたのを確認するとイルカさんは
「無事で・・・、本当に無事でよかったです」
 そういうとイルカさんはその眼に涙をにじませながら微笑んだのだった。

「カカシさんおかえりなさい」
 少し涙ぐみながら本当に嬉しそうにそう言ったのだった。

「・・・ただいま、・・・イルカさん」
 それだけを答えるのがやっとだった。
 チャクラ切れのため俺はそれだけ言うとまた意識を手放して眠りについてしまったのだった。


 俺はそこにいるイルカさんの態度とその言葉づかいから俺は俺がいたそのあるがままの未来を守ることができたのだと
 過去で過ごした俺だったけれど現在を捻じ曲げることはなかったのだと
 そんなことに心から安堵し自分が元居た所に無事に戻ってきたことそしてイルカさんと変わらない関係だということに気が抜けてしまって俺はそのまま深いでもとっても幸せな眠りに就いたのだった。


 心残りは、俺が過去に残して来たその後どうなったかという事柄だけだった。

 それを知るのはまだ少し先の話だ。



fin








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