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 とりあえず今現在の敷地内の状態を肌で感じれるようになったのでそろそろその範囲を少し広げようかと思った所に思わぬ人物が帰って来た。

 俺が広げていたテリトリー内に子供の頃の俺が任務から帰って来て入りこんだのだった。
 まさか自分で自分の気配を覚える羽目になろうとは今この時になるまで考えもしていなかった。
 そして人一人が増えた事によるさようか俺が感知していたテリトリー内の気配が変化した。
 たぶん貼られていた結界のせいだろうと思われる。
 確かな情報も無いので後で彼らが任務から帰って来た時にでも聞いてみる事にした。

 彼が帰ってきたおかげで俺は、敷地内の変わってしまった気配をまた覚える事にした。
 今は推測でしかないが、おおむね間違いではないだろうと確信を持って俺は敷地内にいる人物で変わるだろう気配を全て覚えなければならない事に疲弊しそうだった。
 全ての気配を覚えるのが余りにも大変そうならとりあえずはこの2パターンだけ覚えればいいかもとそんな算段もしていた。


 家の中に入って来たそいつは俺を見とがめると軽く舌打ちをして
「悠長に寝てるなよ・・・」
とぼそりと零した。
 それを聞き咎めた俺は
「ねてな〜いよ。それはそうと、任務御苦労さま〜。 んで、おかえ〜り〜」
とそいつにだけ聞こえるように答えた。
 まさか俺が起きているとは思っていなかったそいつは微かに体をビクつかせ先ほどとは違った意味での舌打ちをした。
 感じ取った感覚から言えば、先ほどの舌うちは俺に対してのいらだち、次の舌うちは俺が起きている事を見抜けなかった未熟な己にまた、吃驚して体をビクつかせてしまった事に対してのいらだちからと感じられた。

 結構色々と子供のころから褒め湛えられていた俺だったけど大人になって子供の頃の自分を見てみると思っていたほど神童ではなかったのだと痛感もした。
 いくら俺の気配が余り感じられないからって俺に対して警戒していたのに、俺が寝ていると分かると油断するなんて・・・ やっぱりこの時は俺もまだまだ子供だったのだのねっと思わざるえなかった。
「あんた・・・ 何してるんだ!!」
 俺の行動をいぶかしんだのかそいつはそう聞いて来た。
「う〜ん? 鍛錬」
 俺は簡潔に答えた。
「何の鍛錬なの?」
 ただ眼を閉じて座っているだけに、かもすると寝ているようにすら見える状態でいったいどんな鍛錬をしているのか興味をそそられたようで更に聞いて来た。
「……ぅん? なんて言ったらいいのかな・・・自分の周りの気配を感じる鍛錬? 自然的な感覚から生き物の感覚まで・・・かな?」
 自分で言ってて説明不足の感は否めないが、結局この鍛錬は感覚的な所に頼る事が大きいので言葉で説明を聞くよりは実践した方が分かりやすいと思った俺は、ためしにそいつに俺と同じような事をさせる事にしたので、一時自分の鍛錬を中断した。
「口で説明するより実践あるのみだ〜よ。 まずはリラックスな状態で待機〜ね」
「・・・」
 しぶしぶながらもそいつは俺から少し離れて座った。
「じゃぁ〜、次は眼を瞑ってね〜」
 俺の言葉に素直にその瞳を閉じた。
 興味のある事には素直に従うのね〜。なんて思いながら俺は子供の頃の自分を観察してみることにした。
「その状態で・・・そうだなぁ〜。・・・イルカ君の気配が分かる?」
「・・・何となく・・・」
 俺がなぜそんな事を聞くのか分からないのかそれとも本当に気配をつかめていないのかは分からないが彼がそう答えるのに一泊間があった。
「イルカ君の気配が分かるのなら、彼の感情の変化や動きが分かる?」
「!!っ」
 俺の言葉に彼は眼を向いて俺の方を見やった。
「お前にはわかるのか」
 ちょっと意外そうにそして悔しそうにその表情を歪めながら俺に聞き返してきた。
「感覚を研ぎ澄ませればね。イルカ君の事なら分か〜るよ♪ ついでにお・・か、かし、・・・君のこともね・・・」
と俺は彼を呼ぶのにちょっとつっかえながら真実を答えた。
「とりあえずこの家の敷地内において、イルカ君の事が分かるようになることだ〜ね。か、かし、君が強くなりたいのなら出来るようになっていた方が後後ためにな〜るよ」
「・・・本当にこんなことで強くなれるのか? コレが出来る〜って何か役に立つのかよ」
「答えてやってもいいけど、本当に強くなりたいのなら自分で考えることも必要だけど・・・ それでも今答えを聞く?」
 俺は彼を見やりながら意地悪くそう答えた。更にこうも言い足した。
「そうだ〜ね。今の鍛錬をしながら今日1日考えてみな。それでもわからなかったら答えを教えてあげる〜ね」
 ニヤニヤと厭らしい笑いを湛えながら意地悪くそう答えてやると
「お前に聞かないでも今日中に必ず答えを見つけてやるからな〜!!」
と捨て台詞を吐き捨てて立ちあがってココから去ろうとした。
 所が運悪くそいつのその捨て台詞は絶叫気味で放たれた為、庭の隅で遊んでいたイルカにまで届いた。
 カカシの声を聞きつけたイルカが顔を上げ満面の笑顔でトテトテとカカシに走り寄りながら
「おかえりーー。カーチ!!! イウカとあそぶの〜」
と精一杯の早さで走り寄って来た。
 イルカにそう声をかけられてしまった彼はそこから去ることも出来ずに困り顔で、でもイルカが寄って来る事にうれしくて彼がが縁側に辿り着くのをオロオロとしながら待っていた。
 そしてイルカが側に辿り着くまでに自分がどうするかを決めて、彼が辿り着くと
「ただいま。イルカ、何してあそぼうか?」
と、俺が吃驚するような笑顔でイルカを迎え入れていた。

 俺は子供の頃そんなに笑った記憶がなかった。
 敷いて上げるならちょっとハニカムくらいしか記憶になく、こんなに嬉しそうな笑顔を浮かべる事が出来たんだと今は無いこのころの記憶にちょっと残念な気がした。

 そんな事をつらつらと考えているうちに子供達の話は進んでいたらしく、イルカの嬉々とした声に現実に呼び戻された。
「あにょね。あにょね。カーチ、きーて。イウカね、どろどろ〜んしちゃの みちぇちぇね」
 言うが早いがイルカは印を切り覚えたばかりの忍術を発動した。
 そのイルカを見ていたカカシはその小さな体で座っていた俺の胸倉をつかみ上げて
「アンタ!!! イルカに何教えてるんだっ!!!」
 余りの剣幕に俺と術を発動したイルカも吃驚して固まってしまった。
 余りにも俺の反応が無い事に焦れたのか俺を揺さぶろうとする気配を感じ取った俺は慌ててその手をはずして
「あぁーーー。それは悪かった〜よ。まさか術を発動出来るとは思わなくって印だけ知っているのも良いかなと思ってそれだけ教えてみたらイルカが見事に術を発動させちゃったんだ〜よ。不可抗力だからね。それとどうやら水遁の術とイルカは相性が良いらしくって・・・、俺もイルカが術を発動させるのを見て後悔したんだからこれ以上は勘弁してよ〜ね」
 降参の意味も込めて両手を上に上げながらそう答えた。
「それに出来ちゃったモノはしょうがないよ・・・。すっぱりとあきらめよ?」
と言えば他にも何か言いたそうだったそいつは不意に泣きだしてしまったイルカにそれどころでは無くなってしまったのだ。

「カーチ。イウカ、おこーたっ、ヒッ。カーッチ。おッ こー ヒック た。・・・・・・」
という具合に始まってしまったのだった。
 イルカに勘違いされてしまった子供の俺はアワアワとあたふたしながらイルカのご機嫌を取り直そうとそっちにかかりっきりになってしまったのだ。

 とりあえずはイルカが簡単とはいえ忍術を使えることはもうしばらくの間は先延ばしになったようだった。
 俺はその事にひとまずはほっと胸をなでおろした。
 しかし、先の事を考えると思考が暗くなる一方だったのでそれは極力考えないように思考の隅に追いやっておいた。
 なぜなら、その瞬間が一番苦痛な時間になりそうだったのだから。


 暫くの間俺は、ぐずるイルカとソレをなだめるカカシとを、劫と一緒に見守っていた。

 そろそろおやつの時間だろうかと思った俺だったが、この時間に子供に何を与えればよいのか分からずに冷蔵庫の中にあったリンゴを徐にウサギの形に剥いて2人の元へ持っていった。

「そろそろ・・・ おやつにしようか? ほら、イルカ君も泣きやんで。 か、カシ、君も困っているからね。 コレでも食べて機嫌を直してね。」
 徐にイルカの前にウサギの形に剥いたリンゴをつきだした。
 それを見たイルカが
「うしゃさー」
と、言うなり今まで泣いていたのがうそのようにご機嫌になりニコニコとそのリンゴを食べだしたのだった。
 そんなイルカを見ていたカカシは、イルカのご機嫌が治った事にほっとしながらも、でもその機嫌を自分が直せなかった事に落ち込んで、そしてその機嫌を直した俺にムッとしていたのだった。
 カカシも一応そのリンゴを一つだけ食べると自室に戻ってどうやら俺に言われた鍛錬を開始したようだった。
 ようやっとリンゴを食べ終わったイルカは、いつの間にかカカシがいなくなってしまった事に気づいてまた泣きそうになっていた。
 そんなイルカに俺はオロオロしながら
「かかし、君は修行する見たいだから、イルカ君は俺とあそぼう? それともイルカ君は俺とあそぶのはイヤかな?」
と俺は狡いいい方でイルカにお伺いを立てて見た。
 そんなことは全然分かっていないイルカは、俺の言葉を聞くと一瞬カカシの部屋を振り返るそぶりをした後、「クオちゃーがイウカとあしょんでくぇるの?」と何かを期待するようにその目をキラキラさせていた。
「イルカ君が、俺と劫と遊ぶので良いならば」
と安請け合いをした事をこの後たっぷりと後悔した。
 何とイルカは俺に午前中にしてくれた 蛇の術をしきりにして欲しいと強請って来たのだった。
 後ちょっとマナさんが 帰って来るのが遅ければ俺はイルカのお遊びで今度こそ本当にまたチャクラ切れをおこしかねなかった。
 なんせその忍術をいたく気に入ってしまったイルカによって何時までも、もっともっとと、強請られまくっていたのだったから。
 どんなに俺がもうおしましにしようと宥めすかしてもイルカは聞きいれてはくれなかったのだった。

 空が赤く染まる前に帰還してくれたマナさんにはとっても感謝したのだった。
 マナさんに怒られることによってようやく俺はイルカから解放され情けないけれど晩御飯まで寝かせてもらう事にした。

 その頃になると今日の鍛錬を終了したのか、一時休憩のためかカカシも姿を見せていたのだった。

 結局俺は晩御飯までのつもりが次の昼ごろまで寝て過ごすはめになってしまったのだった。
 自分で思っていたよりも疲れていたようで、また軽くチャクラ切れも起こしていたのかも知れない。
 たっぷりと寝て起きた俺は下級忍術ぐらいなら繰り出せそうなほどには回復していた。
 今日安静に過ごすことができれば明日には、チャクラは回復してそうな勢いだった。








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