13 気持ち良さそうに寝ているイルカを起さないようにと俺達は、その側より離れた。 しかし、俺はイルカの様子を窺う事が出来るギリギリまでしか離れることはしなかった。 あの歳の子供が起きた時どんな反応を示すのか分からない為、どんな事態がおころうとも対応出来るようにとの配慮からだった。 俺はイルカを眼の端に捉えながら昨日の契約の続きの話をカルパとする事にした。 「あのさぁー。お前の呼び名なんだけどねぇ・・・・・・」 と俺が話始めるとだらけた格好で寛いでいたカルパは姿勢を正して真剣な顔して俺を見上げてきた。 「確かお前の真名って、こう書いてたよな?」 そう言って俺はカルパからも見やすいようにとそいつを俺の膝の上に乗せて指で床に『劫』と書いて見せた。 それを見てカルパは、頷きついでとばかりに俺に向き直ろうと足掻いていたが、俺は膝の上に乗せたソイツのその行動を邪魔してやりたくなったのでわざとその行動を邪魔するように撫で回してみた。 カルパは暫くもがいていたが最終的にはおとなしくなった。 しかし、カルパは俺が隙を見せようものならすぐさまにでも正面にその場所を移そうと狙っている様だった。 「この字なんだけどねぇ〜。別の読み方で『コウ』って読むんだよねぇ〜。で、お前の呼び名なんだけどね・・・『コウ』じゃダメかなぁ〜? 一応さぁ〜、あの字って真名じゃぁん。読み方が違うだけなんだけどさぁ〜、それじゃぁ・・・やっぱりダメかなぁ〜」 俺の言葉に小首を傾げたかと思うと 「別にカルパと呼ばなければ字が同じでも構わないぞ。そんな細かいところまで聞く者は普通気にはしないからな・・・」 とにべもなく曖昧に言いきった。 「じゃぁ〜・・・・・・ 契約の元、我、汝に名をあたえん。汝が名はコウ」 「・・・・・・・・・」 「って感じに向上述べた方がいいのかなぁ〜?」 そう向上見たく言った後聞いてみたら、カルパは盛大な溜息を吐いた。 「主がこんなにのりやすくいい加減な人柄だとは思わなかった・・・」 項垂れながらカルパもとい、劫(コウ)はイルカの側で寝る事にしたのか、彼の傍まで寄って行くとそこに伏せた。 どうやらイルカのことはコウに任せてよさそうだったので、俺は昼飯に何を食べようかと材料になりそうな食材があるか家探しをしてみることにした。 見つけることの出来た食材を見ながら昼飯を何にしようか考えてみた。 その食材からは、ちゃんとしたモノは出来ないけど・・・ちょっとしたラーメンなら作れそうだった。 イルカは『一楽のラーメン』が好きだからこの時代のイルカだって嫌いなはずはないと思い昼御飯をラーメンにする事にした。 この年齢の子供が何をこのむかよくわからなかった為、イルカの好物に逃げたともいうが・・・。 本当ならスープをじっくりコトコト煮込んだ方がいいのだが、今回は時間もない事なのでそこは諦める事にした。 その代わり短時間でも手をかける事が出来るモノにはとことんこだわってみた。 この年齢の子供はきっと好き嫌いが激しいから野菜はそう簡単に食べて貰えないと思うので俺はイルカに野菜を食べてもらう為に工夫を怠らなかった。 そうやって作った即席ラーメンは、野菜などがとっても可愛くかたどられて、野菜本来の味が分からなくなるほど煮汁に浸し、また柔らかくなるまで煮込んだのだった。 そろそろお昼の時間となった頃、ラーメンも作り終わったので俺は、イルカと劫(コウ)を起しに行った。 「ほら〜、二人とも昼飯の時間だよ〜vv さっさと起き〜る!!」 俺の声に寝ぼけまなこをこすりながらイルカが起き上がった。 劫はどうやら眠っていなかったようでスクッと立ち上がるとすたすたと居間に行ってしまった。 俺はイルカとつれ立って居間にやってきて、イルカを座らせてから、お椀に盛りつけてそれぞれの前に置いてやった。 どうやら二人は初めて見る食べ物だったらしくしげしげと眺めていた。 「コレ、にゃに?」 「うん? コレは、『ラーメン』っていうんだ〜よ 美味しいよ?食べてみて〜」 二人は俺の言葉を聞くと恐る恐ると麺をその口にちょっと含んでみた。 その後、まるで競うようにガツガツと食べ始めた。 俺は『そんなに急いで食べなくてもいいのに〜』と思いながらそんな2人を眺めながら箸をつけた。 やっぱりスープがちょっと物足りなく感じた。 この短い時間で作った割にはまぁまぁな出来栄えだった。 劫は嬉々としてお代わりをして二杯目に入ったが、流石にイルカはまだ小さいからそんなに食べられなかったようだ、それでも大人用の丼に半分ぐらいも食べたのだから上出来だと思った。 2人でおいしかったね〜♪ と言い合いながらお腹をさすっていた。 2人とも一杯ラーメンを食べていたので俺は食後の休憩をとらせる事にした。 2人が休んでいる間に俺は食器を洗った。 休憩をとり終わったら、また庭にて2人で遊んでもらって俺はこれから為に、ちょっとした修行みたいな事をする事にした。 本来のチャクラ切れと違うのか、本当ならまだ寝て過ごしているはずなのに、俺はすでに一般生活を送ることには不自由しないほどには回復していた。 それとも俺はこの時代の人間じゃないから、何かしらの作用により回復が早いのかも知れないと思った。 それに、イルカが喜ぶのでつい調子に乗って忍術を使ってしまったが、自分が思ったよりもチャクラの消費が少なかったようで、忍術を使ったことによるチャクラ切れで倒れるようなこともなかった。 もしかするとこれが、コウが言っていた使用チャクラ量の軽減がなせる技なのかも知れないと思った。 だからと言って無理をする気もなかったので、チャクラを消費しないで済む鍛錬をすることにしたのだった。 庭で遊ぼうとしていたイルカが「わんわん、あしょぶの〜」と言ったのを聞いた俺は彼を捕まえて、先ほど決まったカルパの名前を教えてあげた。 するとしばらくの間、イルカは意味もなく『こぉーちゃー、こぉーちゃー』と連呼していた。 そうしてイルカとコウを庭に追いやってから、俺は縁側に胡坐をかいて座り、目を瞑った。 目をつぶって視覚を閉ざして俺はその他の感覚を研ぎ澄ませた。 まず始めにこの家の敷地内を把握する事にした。 生き物の気配は・・・ イルカと劫、それに・・・小さき生き物たち。 敷地内の自然な気配となんて表現していいのか分からないがこの家から漂い出る雰囲気。 そんな些細なモノを覚え自分になじませる・・・ まるでその範囲が全て自分の一部に感じるように。 それは居合の達人が自分の間合い内を把握してその範囲内に入ったモノを一刀のもとに切り捨てる事が出来る絶対感知可能領域。 俺のソレは、居合の達人が持つ絶対感知の間合いを更に広範囲にわたって広げたモノだった。 俺はその範囲内なら些細な違和感ものがすことはなかった。 ただし俺の場合は里内ならその範囲は広範囲に広げる事が出来たが、知らない土地などに行くとその範囲は半径500mくらいがせいぜいだった。 しかし、移動が激しい場合は、攻撃の間合いしかカバーする事が出来ないのだった。 俺は自分で感知出来る範囲内で感じる事が出来る違和感(気殺をして忍びよる敵だったり、知らないご近所様だったり)を探し出す。 その違和感を感じ取る為に今現在のこの家の敷地内の状態(感じる事が出来る感覚)を知る事に努めたのだった。 俺は少しでも早く、感知エリアをこの敷地内からもっと外へと広げる為に今この時からかかさずこの作業を日課にする事にした。 まぁ〜過去に戻っただけなのでほんの少しの修正を入れるだけですぐに本来の感知エリアまで拡大出来るだろうと俺は高をくくっていた。 しかし、やってみると意外にコレが大変だった。 戦時中の為か感じる空気がギスギスしているように思えて、俺の中の感覚との違いを修正するのに手間取った。 イルカといるときは周りの雰囲気はとっても穏やかでポカポカと春の日差しのような感じだったのに、この時代との余りの感覚の違いに俺は本当に戸惑ってしまったのだった。 暫くそうやって過ごしていると、イルカと劫がヒソヒソと話している声が聞こえてきた。 「クオちゃー、おねんね・・なの?」 「そのようだな・・・」 「こぉーちゃー、おねんね。しじゅかになの〜」 そんな事を話しながら俺の傍までやってきて俺の状態を確認し、どうやら俺が寝ているのだと勘違いをしたイルカが、なるべく音をたてないようにと頑張って そーと、そーと、ぎこちなく動きながら俺から離れて行った。 そして俺から一番遠い庭の端まで行くとそこでまた劫と遊び始めた。 反対に劫の方は俺が寝ていないと知っていたようで、どうやらイルカに話を合わせている様だった。 そしてやはりイルカと一緒に俺から離れて行ったのだった。 アイツは俺が何をしているか何となく分かっていたようで邪魔をしないように遠慮をしているみたいだ。 そんな感じがしたのだった。 コレも契約の副産物なのだろうか? 後で劫にでも聞いてみなくてはと思い、今はとりあえず鍛錬に専念する事にした。 だいぶ敷地内の自然の気配や生き物の気配を把握できるようになってきた。 目を瞑った状態でもイルカが何をしてどんな感情の変化が起きているのかを把握するのは分かりやすかった為に簡単だった。 それに比べてコウは、気配自体が希薄で感情の変化も余り感じられなかった。 それはまるで上忍を相手にしている様だったので今回の鍛錬にはもってこいの対象だった。 ただ、コウとは契約を結んでいる為か意識を集中させていたらいつの間にか手に取るようにその変化を感じる事が出来ていて気付いた時には何の苦労もなくイルカとそう変わらなくその状態を知る事が出来るようになっていた。 やはりコレも契約の副産物なのだろうか。 |