11 何かに呼ばれるようにオレは目を覚ました。 そこは白い空間だった。 オレの目の前には今までに見たことも無い生き物が佇んでいた。 「…ここ、は……!?」 『ココは、主(あるじ)の夢の中だ』 オレの声は喉を震わし虚空を振動させて響いているのにその声は何処にも響かず、オレの頭に直接語りかけて来た。 オレは声の主(ぬし)を探すように周りを見回したが目の前の生き物とオレしかこの空間には存在しなかった。 「もしかして…、今のはお前なのか?」 『叱り、我は主(あるじ)と話す為に主の夢を借り受けた』 「…よくは分からないが…コレは俺の夢なんだな?」 『叱り、しかしただの夢に非ず。夢であって夢でない時間。それがココである』 『…我が主と話したいが為に此度の場を儲けさせて貰った。現実では吾子達が纏わりついてそれどころではないのでな…』 俺が目の前のヤツの言葉を理解しようと思案していると更に続けてそう言った。 その言葉から答えを導き出すと、こいつはもしかしなくても今日貰って来たアノ不思議な生き物なのだろうか? 犬のような形をしているが犬ではない不思議な生き物 目の前のこの姿が本当の姿なら俺は何て生き物を貰ってきてしまったのだろう。 その姿は狼に酷似していて、その大きさが一般的な狼のそれではなく、俺の背丈と同じくらいの大きさだった。 (コイツは、仔犬の姿をしていたが、もしかするとコイツはまだ子供で、今の大きさが幼獣としての大きさ・・・とか言わないよな(汗) もし俺の予想道理なら・・・コイツ成獣になったらどんなに大きくなるつもりなのかねぇ〜〜〜) そいつの毛色は青銀に輝いていた。それは光を受けてキラキラと輝くそれとはまるで違う輝きで、自らが光輝いているように見受けられた。 (暗闇にいたらもしかして、コイツは自ら発光していたんじゃないだろうねぇ〜〜〜) その瞳は朱金色をしていた。それはまるで血の色のようでいて、全てを見透かすような眼差しをしていた。 額には石か宝石のようなモノが埋め込まれているように見えた。それはまるで鉱石のアメジストのようにも見受けられた。 それは見る角度によっては、紫闇色にも見えるし、藤色のようにも見えた。 また額にあるのと同じようなモノで大きさが小さいモノがふたつ目尻の辺りについてもいた。 そいつの首周りはまるで鬣のようにふさふさした毛に覆われていた。 また、ちらりと見た限りでは、そいつの牙と爪は黒檀のように真黒に見えた。 更に、確かめたわけではないので憶測ではあるが、鬣から触手もしくは触角らしき長いモノが2本、生えているように見えた。 そいつのそんな姿は、まるで聖獣のようでいて、妖獣のようにも思えた。 魔と聖の二面性を合わせ持つ本当に不思議な生き物だった。 そんなヤツの姿に俺はしばし見惚れていた。 だから、俺はソイツのその行動を阻む事が出来なかった。 俺が我を取り戻した時には全てが終わった後だった。 その目の前の生き物は徐にその触手のようなもので俺の左手首をとり、その手の小指にそっと触れるようにその牙をたてた。 そして小指より流れる血を舐めとったのだった。 「お・お前、…な、何してる!!」 その行動に驚いた俺は、かみかみで何とか声を絞りだした。 『? 何をそんなに慌てているんだ? 我と主との契約の契りを交わしただけだが』 さも当然といわん顔してしれっと答えて来た。 (契約だって!! 何かってに交わしてるんだコイツは・・・) 『契約のあかしに我が真名(まな)を主に教える。我が名は「カルパ」こう書くんだ』 と言い置いてソイツ、カルパは触手のようなモノで空に『劫』と書いた。 『主には、注意を言い渡しておく。我々のような生き物にとって真名とはとても大切なものなのだ。真名を他人に知られるということは己が命をそのものに握られる。と言うことになる。そこで主よ、むやみやたらに我が真名を呼ばないで欲しいのだ。我が真名を知っているのは我と契約した主が知っていればいいのだから』 「・・・ハァ〜〜〜。あのねぇ〜、お前の名を呼ぶなってねぇ〜。じゃぁ、お前って呼べばいいの?」 『・・・主よ、我が話は最後まで聞いて欲しいのだが・・・。先ほどの話の続きだが、契約の証しとして、我は主に真名を明かす。主は我に新たなる呼び名を与える。それで契約は完全に完了する。ただし、契約を途中で放棄することは互いの命を縮めることになるからしっかりと我が呼び名を考えて貰うぞ。我が主よ』 「・・・・・・・・・」 カルパの余りのいいように俺は返す言葉もなく絶句してしまった。 (命を縮めるって・・・。お前が勝手に契約を開始したんでしょうが・・・。はぁ〜、もうすきにして) 俺は諦めに似たため息を心の中で盛大に吐いた。 「あのさぁ〜、カルパ?だっけ、その呼び名なんだけどさぁ〜、それって今すぐつけなくちゃダメ? 出来れば猶予期間が欲しいんだけどさぁ〜」 『・・・確かに・・・、でも余り長くは待てないぞ。契約はすでに行使されている。後は主が我に呼び名を与えて終了だ。だが、長時間放置すると命を縮めることになるので早めに決めることだ』 「急に言われてもこっちも困るよ全く。なるべく早く考えるよ呼名・・・で、他には何もないのか?」 『契約に関しては特にないな。だから、次にいかせてもらうが主は何かあるか?』 「・・・さっきから気になっていたんだけど、その『あるじ』って止めてくれない?俺はカカシ。はたけ カカシって言う名がある。カルパも俺の事は『カカシ』って読んでくれて構わないから。俺だけが呼び捨てにしてるのも変だからさぁ」 『心得た。では我は主が我が呼び名を付けてくれたあかしに主のことを「カカシ」と呼ばせて貰うことにする』 「後、気になったんだけどこの契約ってどういうたぐいの契約なの?」 『!! 済まない。説明し忘れていたか。我も気がせいていたから・・・。この契約は、我の・・・そうだなぁ〜、ツイもしくはパートナーみたいな感覚かな? 我らの一族・・・とたぶん呼ぶのがふさわしいと思われるのだが、我らはこの世に生を受けた時にツイになるモノがいるといわれる。そのツイには一生をかけても逢えるかどうか分からないといわれている。そのツイに逢うことが出来たならば我らは封印された力を解き放つことが出来るといわれている。ただし己が命をかければその力を一生に一度は使うことは出来るのだがな(苦笑)話がそれたが、そのツイを見つけても契約を結ばなければその特別な力はつかえない。また、契約を交わした相手にもその恩恵はそれなりに現れる。たぶんだが、時間に関する力を手にすることがでいると思う。後、主は忍の様だから忍術を発動させるさい、必要チャクラ料を軽減して術を発動させる事が出来るようになると思う・・・・・・』 「思うって・・・おまえな〜〜〜」 『し、仕方なかろう。封じられた力なんだから我自信は知らないのだ。親から聞きかじった話でたぶん我の一族はそういう力を持つモノが多いからそうではないかと言う憶測でしか話せないんだ』 「おくそくねぇ〜。・・・。つまりそれは実際に契約をしっかり結ばなければわからないってわけだねぇ〜」 『すまない。主・・・。こればかりは実際に契約を結ばなければ知ることが出来ないのだ。ただし、我の力は実際には成獣にならなければ使えないんだがな・・・(汗)』 「成獣・・・。ってやっぱりお前その姿で幼獣なのか!?」 『? 何だ、主は我が幼獣だと知らなんだか?』 「!! 知るわけないでしょう。だってお前みたいな生き物みるのも初めてなのにー!!」 しばしの沈黙ののち、俺達は何故かクスクスと笑っていた。 何がおかしいのか分からないのだけれどでも、暫く俺達は笑っていた。 『して、主よ我が主に話せるようなことは、今はこのぐらいだと思うのだが・・・。他に何か知りたいことはないか?』 そう聞かれたがこれと言って特に何も思い浮かばなかったので俺は首を横に振った。 それを見たカルパは軽くうなずくような仕草をとった。 『コレが最後だが、我は言霊に縛られているゆえ嘘は吐かない。また、言霊に縛られてるが故に言葉に力を与えることも出来る。その事についてはおいおい話すことにする。今はコレだけを主に伝える。「真名(まな)によって命ずる!!」と口頭に付ければ我が真名を知っている主は我に絶対順守の命を下すことが出来る。それは我が命をも脅かす命となる故、その力を行使する際は十分に気を付けて欲しい。・・・・・・今のところは、こんなところだ。後はおいおい、ころ合いを見て話すとしよう』 「おいおいねぇ〜」 俺はじと目でカルパを見やった。 そんな俺の視線を無視してヤツは最後にこう締めくくった。 『そろそろ主の目覚めの時間のようだ。それではコレでひとまずはお暇するとしよう』 小鳥の囀りに起されるとそこは今だ馴染まぬ見慣れぬ天上だった。 俺の目覚めに気がついたのか俺に寄り添うように丸まって寝ていたその犬のような生き物がその頭をあげ、俺をジッと見つめていた。 俺はそいつを見つめながら変な夢を見たよなっとお思い寝なおしたかったが寝覚めが悪かったせいか、はたまたジッと俺を見つめる瞳のせいかもう寝れそうにはなかった。 しょうがないので俺は起きる事にした。 左手をついて起き上がろうとしたら、左の小指の方からピリッとした痛みが走った。 恐る恐る自分の左手を見やると、そこにはあの夢がただの夢ではないと教える傷痕と手首に何かが巻きついたような痕が残っていた。 いまだに俺を見つめているソイツに向かって 「ただの夢じゃなかったのねぇ〜」 とあきらめに項垂れながらため息を吐きながらそいつに言ちた。 その言葉を聞き咎めたそいつは 「当たり前だ!!」 昨日は一言も喋らなかったそいつは、言葉を発し俺を驚かせた。 「・・・喋れたのね〜」 そいつを人睨みしてぼそりとそう零した。 「うむ。・・・最後まで終わっていないとはいえ、一応契約を交わしているのでな」 と、簡単に爆弾を投下していった。 爆弾を落とした本人は素知らぬ顔して俺に呼び名を早く決めろと言った眼差しを熱〜くよこしていた。 その瞳を無視して俺は起きだし、さてどうしたものかと頭を掻き毟りながらこれからの事を考えると疲弊した。 まだ、人が起きるには早すぎる時間、けれど寝なおすには微妙なそんな時間だったので俺は昨日飯を食ったテーブルの上に念のためにメモを残して早朝の散歩に出かけた。 カルパと名のったそいつは一言も喋ることなく俺の後をチャッチャッチャッと軽快な音をさせながら着いてきていた。 何も考えずに歩いていたら何時もの癖で慰霊碑の前に来てしまっていた。 碑石には、今だその名を彫られてもいず、そこに刻まれた名の数は俺が知るそれより少ない。 コレを見て俺は本当に過去へとやってきてしまったのだと心の底から実感した。 大切な友の名は無く又、知り合いの同胞の名も師の名も無かった。 知っているようで全く知らない碑石がそこにはあった。 何時もの習慣で暫くそこにうっかり佇んで過ごしてしまった。 その後俺はあてども無く里の中をふらふらとさまよった。 俺の記憶には無い失われたと思われる思いでの時代。 いったい何があったのかは今の俺には知りようもないが、残念なことはイルカと俺が幼馴染だった事実を俺達は知らない。 だから少し不安だった。 本当にココが俺のいた世界の過去なのか・・・ でも慰霊碑は間違い無く同じできっとこれから俺の知る名が刻まれていくのだろうと実感出来た。 毎日毎日眺めていたのだ。そこに刻まれた名が一部同じである事はさっき確認できた。 だから俺は、俺の中から消えてしまった記憶を補うように里を見て回っていた。 九尾によって壊滅的なダメージを受ける前の里を |