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 シンさんの家へ戻ってくると俺の姿に吃驚したイルカと子供の俺がいた。
 子供の俺はすぐに気を取り戻すと、胡散臭げな目で俺を品定めしてきた。
 そして最後に入ってきた父さんに向かって子供の俺は
「父さん、家に帰るの?」
と、まるで帰りたくないというように父さんに聞いていた。
「嫌、当分ここでお世話になる事になったから・・・。カカシ、それにイルカくん。これから大事な話があるから居間に行こうか」
と父さんはそう言うと目で皆を促した。



 その後場所を居間へと移した俺達は思い思いの場所に腰を下ろした。
 2人の子供達は俺の懐にいる生き物に興味を示しながらも、知らない人の俺に警戒をしているのか、もしくは人見知りをしているのか、どちらかわ窺い知れないけどそばにはよっては来なかった。

「イルカ、それにカカシ君。よく聞くのよ。近いうちに母さんと父さん、それにカカシ君のお父さんと3人で出掛けなくっちゃいけなくなったのよ」
「とーちゃー、かーちゃー、カーチのとーちゃー、いにゃいの?」
 その事実を知ったイルカは今にもおお泣きしそうにその瞳に涙を湛えていた。
「イルカ!! 大丈夫だよ。ボクがいるから」
 泣きそうなイルカに気がついた子供の俺はそう言うが早いが、イルカの小さな手をキュッと握ってイルカのその瞳を覗きこんだ。
 イルカは子供の俺の行動に驚きはしたが、それでも涙を湛えた瞳で子供の俺をジーと見つめると
「カーチ、じゅーといっちょ? イウカというの?」
と一生懸命な眼差しで子供の俺を見つめ、そばにいる母親を見つめた。
「そうよ。貴方達2人は私達が戻って来るまで一緒にいるのよ。よかったわね、イルカ」
 マナさんはそうイルカを諭すとニッコリと微笑んだ。
「それでね。母さん達が留守の間はね、カカシ君とイルカ、それにねそこのお兄さんと一緒に過ごしてもらうことになったのよ」
 初めてそこに俺という知らない人の名前があがり吃驚したイルカは瞳に湛えていた涙を引っ込めてしまった。
 子供の俺はその言葉にすっごく嫌な顔をしていた。
 それを見た俺は、子供の頃ってこんなに俺って表情分かりやすかったんだーと新たな発見にちょっぴり凹んでみたりしていた。
「彼の名前は・・・ 『クロちゃん』よ」
「ちょっと・・・」
 焦って否定の言葉を最後まで言わないうちにイルカがグリッと俺の方へ顔を向けて
「クオちゃー!! わんわん!!」
と俺の膝の上にいた生き物めがけてトテトテと飛んできた。
 どうやらイルカは母親が紹介した事によって俺を簡単に受け入れてしまったようだった。
 膝の上にいたヤツはイルカの突進に吃驚してまるで猫のようにイルカの手の届かない高い所へと逃げてしまった。
「わんわん・・・」
 俺の膝の上にいたヤツが逃げてしまって悲しかったのかイルカはその目をウルウルさせて今にも泣き出しそうな態勢をとった。
 それを見た俺達(父さん、シンさん、俺)は、大慌てでそれぞれ行動を起こした。

 父さんは表面上ニコニコと微笑んでいたが内心は大慌てのようだった。
 一瞬ではあったが微かにチャクラが乱れていたから多分コレはあっているはず!!

 シンさんは、イルカを抱え上げあやしながら、
「イルカがいきなり近づいたからきっとわんわんも吃驚して逃げちゃったんだよ・・・、近づく時はゆっくりよって行けばいいんだよ。だからほら泣かないで、ね!? イルカ。男の子だろう」
 何が何だか分からないような御託を並べて子供のイルカをなだめすかしていた。

 俺は俺で大慌てでその生き物のそばによりそいつを抱きあげて顔の真ん前にそいつを抱え上げ
「身の危険が差し迫ったら助けるから、お願いだから・・・、嫌かもしれないけど・・・、あの子に撫でられてあげてー!!」
ととても小さな声でそいつに頼み込んでいた。
 どうやら俺も相当気が動転していたらしい。
 だってその生き物が人間の言葉を理解しているのかどうかとか全然分からないのにそいつに必死に頼み込んでいたのだから

 子供の俺はイルカが得体のしれない人物の生き物に興味を持った事が面白くないのかちょっと脹れ面をしてそれでもなるべくイルカの側へと可能な限り近くにいた。

 マナさんは、慌てふためく俺達をとっても面白いモノのように眺めて、そしてその幸せをかみしめるように微笑んでいた。

 目の前の生き物は俺の言葉が分かったのかどうかわからないが必死に頼み込んでいる俺の鼻の頭をペロリと舐めて来た。
 まさかこいつがそんな行動をするとは思わなかった俺はとっても驚いたがそれが了承のあかしかどうか問いかけてみた。
「・・・あの子に触らせてくれるって事?・・・」
 俺の問いかけに合わせるようにそいつは尻尾をパタリと一振りして見せた。
「ありがとう」
 俺は思わずそいつをギュッと抱きしめていた。
 俺の抱き締めの力が強すぎたのかそいつは俺の胸を思いっきり蹴り飛ばして俺の腕がら逃れるとヒョイ、ヒョイっとシンさんの体を上って行き今にも泣きそうなイルカの顔をペロリとひと舐めするとすぐにその場を離れて俺の側に戻ってきた。

 イルカはそいつの行動に驚いて、そしてハッとして父親の腕から暴れる様にして降り、トテトテと今度は父親に言われた事を守りゆっくりと近づいてきた。

 俺の足元にいたそいつは近づくイルカに気がつくと今度は逃げないでイルカが近づいてくるのを少し警戒しながら待っていた。

 イルカは俺の足元まで来るとしゃがんで
「わんわん」
と言って目をキラキラさせて小首を傾げながらそいつを見ていた。
 どうやら次の行動をどうしていいのか迷っている様だった。
 俺も2人をびっくりさせないように静かにしゃがみ込んで
「優しく頭を撫でて上げてご覧」
とイルカを吃驚させないように静かに、怖がらせないようになるべく優しく聞こえるように声をかけた。
 俺の言葉を聞いたイルカは、コクリと頷くと四つん這いでそばまでよって来て、そーっとその頭に自分の手をのせて優しく優しくそいつの頭を撫で始めた。

 最初はそれなりに警戒していたソイツだったけどイルカが自分に構いたいだけだと分かると、緊張を解いたのか1回だけ尻尾をパタリと振った。

 その後、晩御飯になるまで、この先の事を考えてか彼らは、俺達3人をその部屋に残してそれぞれ何処かへと消えてしまった。

 子供の扱いに多少は慣れたと言ってもそれは13歳程度の下忍の子供だ、それ以下の年齢の子供・・・ 独りは過去の自分と来たもんだ ・・・と関わらなければならないとなり、けれどどう接していいのか分からなくて、ぎくしゃくしていたけれども、時間が経つにつれてイルカは俺に慣れてくれたようだった。
 ひとえにそれもこいつのおかげなのかもしれないが・・・
 そんな事を思い俺の側にいるそいつを何とは無しに眺めやった。

 それに引き換えさすが、子供の頃の俺・・・ 扱いづらい・・・
 イルカさんも最初は俺の事とっても扱いづらかったのかな〜。何て柄にもない事を思ってしまう程には凹んでいた。
 子供の頃の自分なんだし、大丈夫でしょ♪ と高を括っていたのだが、そんなのはお角違いだった。まるで宇宙人に接している様だった。

 すでに下忍だった子供の頃の俺・・・ 警戒指数マックスですよ〜(泣)
 それでも、イルカが俺に懐いたから警戒しながらも俺のそばにいるというよりは、俺の側にいるイルカの身を守るようにこいつも俺の側に来たと言った方が正しそうだ。

 こんな状態でこの先やっていけるのかね・・・ 全く
 もしかしなくても俺は外れ籤でも引き当ててしまったのかもしれない。

 微妙な関係を築きながら俺はその日を過ごした。
 まだまだ、チャクラ切れが続いている状態の俺は申し訳ないが、晩御飯後、早々に就寝とさせてもらうことにした。
 その際、父から借り受けていた暗部の面をこっそりと返すことも忘れなかった。








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