なるたけ自分の殺気が漏れるのを最大限に抑えて気殺し、最後のターゲットを殺(や)る為に俺は行動に移した。
 流石にこの一味を纏めるだけのカリスマ性を持っているだけはある咄嗟に俺の襲い来る刃を皮膚一枚で避けた。
 そして俺を見とがめるとどこからか取り出した武器を構えた。
 お互いにその身を見定めると拮抗した力から簡単に身動きが出来なくなった。
 短いようで長いような時間が流れた。
 ただ睨めっこしているだけではらちがあかない。
 俺は思い切って打って出ることにした。
 もしもの時は後ろの2人が何とかしてくれるだろうと彼らを信用して飛び出した。

キンー!

 金属と金属が打ち鳴らす澄んだ音が洞窟内に響いた。
 相手は上手い具合に打ち付ける俺の刀を流して決して切り結ぼうとはしなかった。
 流石は敵の統領だけはある。
 俺の武器が刀だけとは思っていないらしい。
 決して懐に俺を入れることはなかった。

 それでも少しずつ傷をつけていった。
 しかし、それでも俺は優位に立っている気がしなかった。
 確かに手ごたえを感じてはいるがはっきりとしないが、敵に微かな違和感を抱いた。

 俺は訝しみながらも目の前の敵と刃を交わしていた。
 こう狭い洞窟内だと下手に忍術を使うことが出来なかった。
 下手に使えばこちらもただでは済まない。
 お互いに最後の一手が決められなくジリジリと体力を削っていくだけだった。
 しかし、俺は時間が経てば経つほど違和感が増していった。
 こういうときの俺の直感は信じるに値する。
 きっとこの戦いは長引けば長引くほどこちらが不利になる。
 後ろの2人にさえ手に負えないほどに・・・

 俺は、2人の・・・ 否、同じ木ノ葉の同胞を守るために自分に掛けられた封印を解いて相手の術を見極めることにした。
 きっと、幻術を応用した特殊な術が発動しているはずと、その何かしらの術を打ち破る為に俺は等々火影様にかけていただいた封印術を解き放った。

 俺の気配の変化を察知して、後ろから付いて来ていた2人があわてたようにこちらにやってきた。
 2人は、黒かった俺の髪の毛が銀髪に変わっている事に息をのんだ。
 そして、俺はそんな2人を無視して面の下から写輪眼で辺りを見渡した。
 するとこのアジト自体が幻術で姿をごまかした洞窟で予想では結構広い構造をした洞窟だと思われた。
 今見える限りからの予想でしかないのだけれど。
 その幻術の向こうの空間で一人の男が更に何かしらの姿隠しの術を使って隠れながら、幻術にまぎれながら、更には実態を伴った分身の術で幻術にそれを重ねながらあたかも本物が戦っているように見せていた。
 本人は何重もの術の中にいた。
 俺の写輪眼をもってしてもチャクラの塊が人の形をしているようにしか見えなかった。

 その塊は入口付近に佇む二人により近い所にいた。
 俺には実態の伴った分身を幻術にまぎれさせて相手をさせ、そいつは、2人に何かを仕掛けようと一気にその間を詰めに、今まさに行動しようとしていた。
 このままそいつをほっとくことはできない。
 俺は写輪眼を使って目の前の分身に幻術をかけ、急いで利き手にチャクラを集めた。
 この短時間では、雷を切る程のチャクラ量は望めないがその行動を阻止、もしくは怯ませ退けるか、運が良ければ倒すこともできるかも知れない。
 あとは、こいつと俺の運くらべだとばかりに俺はかなり無理な体勢で雷切を放った。
 流石に敵も一筋縄ではいかなかった。
 俺が向かってくることに虚を突かれはしたが、瞬時に冷静さを取り戻し紙一重で俺の雷切をよけた。
 しかもそいつはご丁寧に反撃を入れて来た。
 面が幸いしたといってもよいのか、その一撃は俺の面に入りそれを砕いた。
 それでも術の影響を微かに受けているのか、その動きは生彩さに欠けていた。

 たぶん敵は俺の雷切で放電する雷の影響を受け体に痺れをきたしていると思われる。
 今はそいつをほっといて俺は2人の側により、今の状態を簡単、間接に説明した。
 俺の説明を聞いている間、2人の視線が俺の顔の上に痛い程注がれていたがそれを俺は無理矢理無視し、俺は2人に掛けられている幻術を敵の痺れが切れる前にとさっさと解いた。

 俺はこの面倒な戦いをさっさと終わらせるために2人にニッコリと笑みを向けて
「チャクラ切れで倒れたら後の事はお願いします」
 それだけ言い置いて敵に突っ込んでいった。
 俺のその背にそっと、でも力強一言。
「わかった」
と声が追いかけて来た。
 俺はその声に安心してその敵に全力で立ち向かっていった。

 目の前の敵に対峙するまでに、おれもそれなりにチャクラを消耗していた。
 精々雷切が後一発、よくて二発撃てるかどうかというぐらいしか残っていなかった。
 確実にその一発を充てるために俺はその布石を敷いて行くのだった。

 俺はとても簡単な印を切ると術を発動させた。

『火遁・螢火の術!!』



 2人は俺の切った印を見て、息を飲んでいるようだった。
 それもそのはず、この術は本来なら暗闇を照らす為の術だった。
 でも俺はその術に手を加え敵の目の前で強烈な光を放つようにしていた。
 もちろんこの術は敵も知っているような一般的な術だ。
 だから敵は俺の切る印を見て、その顔を愉悦と嘲りに歪ませてニヤニヤと俺を馬鹿にするみたいに嘲笑していた。
 そんな所に放たれた俺の術は敵の目を見事に焼いたようだった。
 部屋の入口付近にいた2人は術から距離があったのと面を被っていたのが幸いしたのかそんなにダメージを受けているようには見受けられなかった。
 そして俺は今度こそきっちりと息の根を止める為にチャクラを手に集めだした。
 先ほどとは違いじっくりと時間をかけて雷切りを発動させる。
 敵に向かってその一歩を踏み出したその時、左目に痛みが走ったと思ったら写輪眼が暴走を始めたのだった。
 暴走した力はその場に黒い歪みを生んだ。
 俺は慌ててその暴走を収めようと発動中の術を中断した。
 そして左目を封印する為だけに力を費やした。


 無我夢中だった俺はどうやったのか気がつくと力の暴走を収めていた。
 しかしその為に俺はチャクラの全てを費やしていた。
 俺は最後の力を振り絞って周りを確認した。
 すると目の前には体を半分ほど抉られて倒れ伏した敵が転がっていた。
 2人は部屋の入口付近でとっても警戒しながら立っていた。

 2人の無事を確認できると安堵したのかそこで俺はチャクラ切れで力尽き意識を手放した。





 目が覚めるとそこは遠い昔に見慣れた部屋だった。
 どうやら倒れた俺は火影邸に収容されたようだった。
 昔病院嫌いだった俺は、よく怪我などで倒れるとここに監禁させられ療養させられた。
 何せ病院に収容されても俺は意識が戻るとすぐに病院を脱走して心配する皆を困らせていた。
 業を煮やした火影様が数名の暗部を監視につけて俺を火影邸の一室に閉じ込めて俺の傷を癒させた。
 その時にお世話になった一室だった。

 感慨深い・・・というより懐かしい!? ちょっと不思議な感じがした。

「・・・目が覚めたか?」
 不意に掛けられた声に俺は声の主を探して自分の周りを見回した。
 すると近いようで遠い、微妙な距離に狐面を被った彼がいた。

 どうやら彼は俺の監視役のようだった。
 そのかもしだす雰囲気はなぜかちょっと軟化しているようにも感じられた。
 たぶん俺がこんな所で寝かされているために少し遠慮したのだろう。
 父は例えいがみ合っている相手でも仲間なら決して見捨てはしないのだから。

「・・・俺は・・・どれぐらい寝てましたか?」
 俺は今一番気になることを彼に聞いてみた。

「・・・あれから、半日ほど経過した。」
 彼はこちらに一瞬目をやったがすぐに正面を向いて俺の質問に答えてくれた。

 どうしてか彼から何かを窺うような気配を感じた。
 俺は記憶をたどり自分が今どういう姿をしているのか思い出し、それで彼の行動の意味がようやく分かった。
 父がこんな状態ならきっと一緒に行動した彼もきっと俺が何者なのか知りたいだろうと思い俺はだるい体を起してみた。

 いつもと違いなぜかあれほどのチャクラ切れを起こしていたにも関わらずこの短時間で動けそうなくらい回復していた。

「火影様に今会えますか?」
「まだ、寝てろ!!」
 そっけないけど俺の事を労わる言葉を父は返してきた。
「どうしても今会いたいんです」
 俺は決意を込めて更に言いつのった。

 何かを感じたのか父は式を何処かへと飛ばしていた。

 しばらく待つと返事の式が届きそれの中身を確認した父は俺に向かってその目で行くぞっと合図を送ってきた。

 俺はゆっくりと起きだしてその部屋を出たらいきなり父に何かを顔にかぶせられた。
「被ってろ」
 そっけない返事が返ってきたが、父を見るとその顔には面がなかった。
 どうやら俺の素性を憚ってか己の面を俺に被せてくれたようだった。

 ゆっくりとふらふらしながら歩く俺を見かねて彼は俺に肩を貸して俺を引きずるようにすたすたと火影様がいる所へと向かって行った。

 幸か不幸か目的地に着くまで誰ともすれ違うことはなかった。
 申し訳程度に扉をノックして父は返事も待たずに部屋へと入室した。
 入室したと同時にその部屋には結界が張り巡らされた。






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