一通り昨日話せなかった事などを詰めて話、全てが終わった時には既に夕方近くなっていた。
 まぁ〜ここに来た時点ですでに昼過ぎだったのでしょうがないと言えば、しょうがないのだが…。
 そして最後に火影様が印を切って俺の髪の色とチャクラの量と左目の封印をした。
 それが終わると俺は狗の面を被った。
 まるで見計らったかのように2人の暗部が姿を現した。
 1人は狐面で、ギンコと呼ばれていた。
 もう1人は、蛇面で、ワダツミと呼ばれていた。

 狐面は、言わずもながら俺の父さんこと、はたけ サクモ
 蛇面は、父さんと仲の良い、うみの シン

 任務内容は、賊退治。賊は賊でもただの賊ではなく、抜け忍の集団との情報が入っている為か大事をとって暗部の仕事となったようだ。
 その抜け忍の中に有名な名がちらほら上がっているのがネックでそうなったようだ。
 で、この任務2人はお目付け役で戦闘は俺1人でやることと言われた。
 ただし、俺の手に負えないように見受けられるのなら手を出して良しだそうだ。
 全くいつの時代にいっても三代目の人使いの荒さは変わらないのだと痛感した。
 又、目的地に俺が辿り着けなかった時にもギンコとワダツミで、始末しろとのことだ。
 で夜陰に紛れて俺たちは里を後にした。
 気がつくと里からだいぶ離れた所まで出てくることができていた。
 もしかして、目的地があるのと無いのでは進める距離が違うのかもしれないと思った。
 足早に先を急ぎながら俺は気になることを聞くことにした。
「あの〜。相手ってどんな奴なのか情報があれば知りたいんですけど・・・」
 おずおずと聞けば案の定というかギンコが盛大な溜息を吐いて
「お前そんな当たり前の情報すら知らんのか? どんな田舎から出てきたアホか!」
 バッサリ切って捨てられた。
 ワダツミは、クックックッと笑いを堪えながら丁寧に教えてくれた。
 敵は霧隠れの抜忍が全体のほとんどをしめていて、残りは他里の抜忍で構成されているそうだ。
 勿論、その中には木ノ葉の里の者もいるそうだ。
 俺はその情報を元に面の下で顔を引きつらせていた。
 こんなにバラエティーにとんだ多種多様の里の忍をいっぺんに相手をするのは少々骨が折れそうだ。
 上手く立ち回ることが出来れば一人でもなんとか出来るだろうが俺も無傷では済まされないだろうことはよういにわかる。
 ワダツミはきっと助けてくれるだろうけどギンコはどうだろう・・・。
 俺を目の敵にしているようだったけど・・・
 二人の助けがあるのなら俺は左目を使わなくてもしれないが・・・
 それは望めなさそうだ。
 まっ! なるようになるだけだと腹を括って覚悟を決めた。
 敵のアジトと思しき場所につくまで俺は2人に今知りえる情報を片っ端から聞き出した。
 現地に到着してから一日がかりで敵の本拠地等の情報を出来るだけ多く調達して回って日が落ちて丑三つ時近くまで待ってから敵をせん滅すべく打って出た。
 本当は、明け方近くの方が敵も油断しているだろうからいいのだが、痺れを切らしたギンコによってそこが待てる限界ラインだったのだ。
 一応人生の先輩? だから顔を立てて俺もそれなりに譲歩した。
 なんせ戦うのは俺なんだから多少時間を融通してくれてもいいじゃないか。
 いくら過去といったって細かいところまで詳しく知っているわけじゃないのだから・・・。
 アジトの入り口には、外からは見えにくい場所に見張りが立っていた。
 勝負は一瞬。
 通り過ぎざまに、この爪と牙(忍刀)で見張りの急所を薙いで二人いっぺんに倒した。
 これで俺たちが侵入したことを敵に知られるのを先送りに出来る。
 一時の間は集中攻撃に合わなくて済むだろう。
 俺はその速度を緩めることなく突き進んだ。
 そこは、自然の洞窟を一部利用して作られたアジトで迷宮のようだった。
 最初の分かれ道に辿り着いた俺は、入口への通路を隠すためにそこへ幻術をかけることにした。
 これでここから敵を逃がす確率はぐんと減った。
 入り組んだ洞窟の割には未使用の部屋がいくつもあり無駄足を何度も踏む羽目になった。
「くそっ!」
 思わず悪態を吐いた。
 無駄な時間だけが過ぎ去っていく。
 俺のイライラを余所に二人はのんびりゆったりした感じで俺の行動を見守っていた。

 ある程度倒して進むと敵も侵入者に気がついた。
 それなりの人数でやってきて行く手をふさぐ。
 それぞれの里特有のクナイや手裏剣が投げられた。
 俺は薄皮一枚ぐらい切れるのは構わずに最小限の動きで最大限の威力を発揮していた。
 すれ違いざま一線で敵忍達は次から次へと俺の刀の錆となっていった。
 俺の通った後には死体の山が次から次へと増えていった。

 雑魚と呼ばれるほど弱くはない者たちをあらかた倒したころ、ようやっと少しは骨のありそうな奴と遭遇した。
 それなりに出来るようではあったがまだ俺の敵じゃない。
 とはいえ忍術なしで勝てるほど敵も甘くもない。
 それなりの実力の持ち主というわけだ。
 爪と牙で牽制しながら相手の隙を窺っていた。
 相手との間合いを一気に詰めた。

 ガキッン!

 互いの刃が打ち合って互いに一歩も引けず鍔迫り合いが始まった。
 忍失格の行為だったが、俺はそのおかげで相手の懐近くまで侵入することが出来た。
 相手の重心をずらし、刃の軌道を逸らす。
 競り合う刃を横に流し、俺は相手の横をすり抜けながら爪でその首を掻き切った。
 その惰性のまま、肉塊と化した体は地に倒れ伏した。
 運が良かった。
 上手くいなすことが出来たから忍術無しでも何とかなった戦いだった。
 まだまだ忍術を温存できそうだ。
 出来るのなら最後の相手の時まで温存したいが・・・少し難しいかもしれない。
 敵は未だにたくさん残っているはずなのだから。
 俺は小技にもならないこけおどし程度の忍術を駆使し、相手の意表をついてその隙に倒していった。
 忍術としてはどうだろうと思う術でも使い方次第でとても役にたつ。
 それに現役の忍ではないからこんなにひっかかってくれるのかも知れないしね。


 だいぶ奥までやってきた。
 すでに多くのヤツを屠ってきた俺はまだいるのか、いないのかさえ分からなくなっていたのでお目付け役の二人に聞くことにした。
「あのさ〜。いまのヤツで最後だっけ?」
「残り一人だ。ちゃんと覚えとけ!」
「まぁ〜。まぁ〜。ギンコ、そうカリカリしなくとも彼は一人でここまでこなして来たではないですか・・・。一人一人、わざわざ顔なんて確認しませんよ」
 苦笑しながらフォローにもならない愛の手をワダツミが入れた。
 ギンコは相変わらず、俺には愛そうが悪いけどワダツミに対してはどこまでも寛容だった。
 唯でさえ疲れている俺に追い打ちをかけるようにネチネチとお説教じみた小言をここぞとばかりに吐いてくる。
 そのせいと言う訳ではないだろうが・・・俺は疲弊しきっていたにも関わらず更に疲れを背負い込んでしまったように脱力感に襲われた。

 そんな俺に追い打ちをかける様に奥の方から人の気配が感じられた。
 俺はもう一度気を引き締めなおし、奥の気配を頼りに慎重に歩みを進めた。
 俺の変化を感じ取って今まで茶々を入れていた2人の気配もすっと変わった。
 どうやらこの洞窟の最奥までやって来たようだった。
 ここの喧騒を聞き知っているはずだろうにそいつはまるで何にも応じた様子もなく悠長にそこで何やらやっていた。
 予想だが、きっと何時もと代わりのない行動を繰り返しているのだろう。
 その落ち着きから察するにこいつは只者ではない!
 俺は瞬時にそう感じ慎重に行動することにした。
 さすがは敵の総大将!
 隙はない。
 何時までもここで様子を窺っているわけにもいかない。
 俺は相手が部屋の中を動く様子を窺いながら、出来うる限り相手の情報を手に入れる為に観察した。
 その動きから導きだされる予想出来うる攻撃パターン。
 その部屋のどこに隠し武器や、部屋があるか・・・もしくはありそうか。
 そしてそれらをもとに、自分のとるべき行動の軌道
 例え逃がしてしまっても後ろから来るのは、木ノ葉の白い牙と言われた彼と実力の底が見えないワダツミと呼ばれる男だ。
 この程度の男ならあの2人なら何とでも出来る。
 ただ、後々きっと彼サクモの嫌みのネタになるのだけだ。
 そこはさっくりと諦めて腹を決めるか。

 そして俺は行動に移した。






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