気づくとそこは俺が修行をしていた所だった。
 そこはまるで何事もなかったように
 穏やかな光に包まれていた。

 暴走したチャクラが暴発した割にそこはいつもの森の顔をしていた。
 そういえばイルカさんは大丈夫だったのだろうかと回りを見回して彼がどこかに倒れていないかと探してみた。

 俺がしっかり結界をはったのでたぶん大丈夫だとは思うけれど、ちょっと予想以上の暴走だったから彼の身が心配だった。
 とりあえず、イルカさんが立っていた辺りを中心に周辺(彼が飛ばされていそうな辺り)に予想をつけて探してみた。

 しばらく探してみたけれどイルカさんの姿はどこにも見当たらなかった。
 ならば倒れている俺を見た彼が里へと医療忍を呼びに行ったのかもしれないとしばらく待ってみることにした。
 しかし、待てど暮らせど一向に里から誰かが来るようすはなかった。
 どうしようかと悩んだがもう少し待ってみることにした。

 しかし、待っても、待っても誰も来なかった。
 思っていたよりも長い一日がやっと終わり日が暮れていく。

 もしかすると俺は、一日以上気を失っていたのかも知れない。
 なのに、イルカさんはおろか誰も来なかった。
 里で何かあったのかも知れない。

 そう思ったらいてもたってもいられなくて、俺は焦って里へと向かった。

 しかし、里が近づけば近づくほど、俺の違和感が強くなっていった。
 里が目視できる距離になると俺の足はとうとう止まってしまった。

 認めたくなかった
 だってそこにあるのは…
 見間違いであってほしかった。
 俺の記憶の中にある里に
 よく似ていたのだから

 ただ、少し雰囲気が違うような気がした

 どう違うのかと聞かれると困るけど
 とりあえず今がいつなのか気になったので確かめることにした。
 ただし、里のものから聞き出すのは何かと問題もあるかも知れないので、とりあえず里の者以外の人に聞くために外界へと向きをかえて俺は里を後にした。

 しかし俺はそこで大変な目にあうことになった。

 確かに俺は里の外へと向けてその足を進めたはずなのに気がつくとなぜか里に向かっていた。
 何か変な術にかかった感じはしなかったのに… もしかして俺の知らない間に… いや、そんなことはないはず。いくらなんでも俺に気づかれずに術にかけるのは至難のはずだから。
 とりあえず俺は時間をかけて、すべての方角に里から遠ざかってみたものの里の外には出ることができなかった。
 またどういう基準のもとに決定されたのか、場所によっていける距離が全然違った。
 里を中心に円の形をしているかと思った俺の予想は簡単に裏切られていた。
 もしかしたら、暴走した術の効力のせいかとも思ったが、その場所を中心に検証してみても全然円の中心にはなり得なかった。
 まだ、里を中心にしてみたほうがより円に近い感じがした。
 何日も費やして何とか自分の行動範囲を把握することに成功した俺は、ここがいつの時代かやはり知る必要があると思いしぶしぶ火影様に会いに行くことにした。
 心配事と言えば、現在の火影様が何代目かということだけだった。
 出来れば知っている火影様であるほうが説明もしやすいかとも思うが、もしここが過去の里であるのならできれば、俺の事情はなるべく話したくなかった。
 俺から未来の話が漏れてそれがどんな影響を与えるかわかったものではないから……
 ことは慎重に進めなければならない。

 そこで俺は、火影様に会うために暗部の姿にまず変化し、もしもの時の為に髪の色を黒色に変えておいた。
 さらに念をいれて俺の写輪眼を他人に晒さない為に封印しておいた。
 俺が、はたけ カカシ だとはっきりと分かるような要素をしっかりと隠した。

 とりあえず里の近くにあった湖に自分の姿を写しみて変なところがないことを確認後俺は暗部専用の通路を通って火影様の部屋へと向かった。


 何とか誰にも見とがめられずに火影様の部屋のそばまでやってくることができた。

 早速俺は部屋の中の気配を探ってみた。
 …この気配は、さ・ん・だ・い・め …

 中から感じる気配はどんなに否定してみても三代目火影様のものだった。
 最悪… どうやら俺は過去へとやってきてしまったようだった。
 ただここがどれくらい過去なのか心配になってきた。

 幸いなことなのか部屋の中からは三代目以外の気配はしなかった。
 ただ、俺にも感づかれないでいられるほどの使い手がいたのならばどうしようもないけれど……。
 とりあえず警戒はしながら、緊張からか声が震えないかと心配しながらたった一言。『火影様』と忍術で声を届ける。
 三代目以外に人がいても火影様以外に聞こえないように細心の注意をはらった。

「…誰だ?」

 中から誰何とは違う問いが届けられた。
 緊張から声が震えるのを気力だけで無理矢理押さえつけて俺は何とか答えを届けた。

「…火影様。お話があって参上いたしました。入室してよろしいでしょうか?」

 ものすごく緊張した。自分が何者かも名乗らずに会ってほしいとお願いするのだから。
 ただ、暗部専用の通り道を使って火影様の執務室へ来ていたので、暗部の誰かだと思ってくれればいいのにと、まるで何かに祈るようにその時を待った。

 しばらくすると、誰かが火影様の執務室の外へ出て行くようなそんな感じがした。

 さすが、木ノ葉の里だ。いい忍がいるなぁ。と思いながら待っていると「入ってこい」と声がした。

 俺は、恐る恐るといった心境でそれはおくびにも出さずに火影様の前に降り立った。


 俺の姿を見咎めて少し吃驚したようだったが、何か一人で納得した後、溜息を吐き
「何の悪ふざけだこれは…。まったく…今回の任務に対するわしに対しての新手の抗議のつもりか…… いや、すまぬどうやら知っている者と間違うたようだのう。……して、そなたはいったい…」

 そう言い置いて俺を検分するようにその眼差しを鋭くした。

 俺は、さてこれからが本番とばかりに、強張った筋肉を解す意味も兼ねて、深呼吸をしてから
「火影様、お願いがございます。…火影様以外の者には聞かれたくないので人払いと防音の結界を… 張っていただけないでしょうか」
 何かを考えながら、火影様は煙管に火を入れ、その後紫煙を細く吐き出した。
「その前にひとつ聞く…… お主は誰だ」

 その質問にヒヤッとしたが、俺は自分の存在がこの時代にどんな影響を及ぼすのか分からないので出来るのなら三代目以外には聞かせたくなかった。
 そこで、誰が聞いていても差し障りのないこと、と言ってもたかが知れているがそれを話して納得してもらうしかないだろうと腹をくくって口を開いた。

「火影様。俺はこの時代とは違う時代から来たものです。ここがいつの時代かせめて教えて頂けないでしょうか。後、俺の名をあかすためにはせめて防音結界を張っていただかない限りはちょっと憚られるので……たいした情報を提示できず申し訳ございません。ことがことなのでどうしても慎重にならざるをえないのです。後、ここが俺のいた時代の未来に当たるのならあらいざらい話すことを火の意志に誓います」
 俺はその後頭を下げた。
 後は火影様の采配を待つだけだった。

 しばしの後に火影様は、紫煙とともに大きなため息を吐いた。
「…お主の話が本当ならば、結界(それ)も仕方あるまいか…」
 と言い置いておもむろに印を切り結界をはった。

「これでよいのだろう…?」
 そしてその眼で先を促してきた。
 そこで俺は、変化していた暗部の面を外した。
 俺の素顔を見た火影様は、その瞬間息をのんだ。
 とりあえずは、名を明かすためにその顔をさらした。
「私(わたくし)めは、……はたけ …カカシ と言います…」

 俺の名を聞くと火影様は息を飲んだ。
 しばしの沈黙の後、火影様はまた溜息を吐きボソッと年号を口にした。
 それを聞いた俺は天を仰ぎみた。
 そして思わずボソッと「最悪」とつぶやいてしまった。

 どうやらここは俺のいた時代から遡ること二十年以上も前の時代であるようだ。
 確かこの時の俺は中忍になったぐらいだろうか。
 俺が一言未来の話をしてしまえば、助かる命がきっとたくさんあるだろう。
 しかしそれは未来を変えてしまう。
 決して言ってはいけないこと…
 話せることは今現在の俺の状態とどのくらい先から来たかだ。その上で帰る為の助力を得なくてはならないだろう。
 俺の左目のことは……どうするか

 俺の様子を見ながら俺が話し出すのを煙管を吹かしながらただ静かに待っていた。
 そこで、俺はまずは髪の色を本来の色に戻した。
 咄嗟の時に面をかぶれば髪の色が黒く変わるように細工をすることを忘れなかった。

 俺の姿を見た火影様は息を飲み一言「サクモ」と零した。
 そんなに似てるのかねぇ。父さんに…
 と思いながら
「どうやら私(わたくし)めは今より未来から来た模様です」
 俺はそう切り出して、ここに飛ばされて来てから今までに自分が経験したことと、どうしてここに飛ばされるはめになったのか、話せることを話、そして最後に帰る方法が分からないので、ぜひ火影様のご助力を仰ぎたく、ここに来た事を話した。

 一通り話し終えて火影様の答えを聞くために真っすぐと見据えた。
 俺の話を聞き終わると火影様は何か考え込んでしまった。

 三代目が熟考に入ってどれくらい経っただろうか。
 しばらくすると、外から(この部屋にはられた防音結界は中の音は外には漏れないが外の音はしっかりと拾える。さらに気配にいたっては内外にかかわらず筒抜けという状態)けたたましい音を奏でながら火影の執務室に近づいてくる者がいた。
 念のため俺は面をかぶっておいた。






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