side カカシ





ふと気付くと 俺は暗闇を行く

上もなく、下もなく、
前もなく、後ろもなく、
右もなく、左もない

虚空の闇

足元は、無いようで、有って
有って、無いようなもの
いつ落下してもおかしくない

自分の意志はなく、歩む足

ふとした瞬間『オビト』『リン』『ミナト先生』など、俺の記憶の中の人達が浮かんできた。
その闇の虚空に、まるで壁に掛けられた絵のように、何枚も何枚も、大小さまざまな大きさで……

「これが、走馬灯と言うやつか…」

と、呟いたところで、返ってくる声もなく、結局俺は歩みを止めることも、ゆるめることもなく、そこを通り過ぎた。


ふと思う
(俺は、本当に進んでいるのだろうか)
そして俺は振り返る
まるで心残りがあるように。


遥か遠くの虚空にあの絵みたいのが輝いて見えた。
俺は何かに安堵してまた前を見つめ
導かれるように
引き寄せられるように
歩き続けた。


そして、虚空に浮かぶ小さな光に辿りつく
光の元には、消えたはずの懐かしい人が待っていた。


「カカシか…?」
「…こんな所に居たんだ…」

そして、オレは、彼の人の隣に腰を下ろした。
「お前の話を聞かせてくれないか?」
彼の人はオレに聞いてきた。
「ああ… すごく長くなるからゆっくり話したいんだけど…」
そして彼の人は微笑んで
「ああ…いいさ」
と答えた。
オレは久しぶりに父さんと話せることが嬉しくて、まるであの時に戻れたようで、満面の笑みで「あのね 父さん」と話し始めた。


オレは父さんに、彼が居なくなってから今までの事を余す事無く話した。
もちろん恋人の事も・・・

今思い返すと本当に色々なことがあったんだなと話途中に思い耽りそうになる。

オレが全てを話し終わるまで、父さんは話の合間に相槌を打ったり、質問をしたりした。
そして、話し終えて一息つくと父さんは
「長居をしすぎたようだ。カカシ、行くぞ」
と、言って立ち上がりオレに手を差し伸べた。
オレは、その手を取ろうと腕を伸ばしたが、ふと、イルカ先生の愁いに満ちた泣き顔が、チラついてオレはもう片方の手で胸を鷲掴んだ。
そして、父さんの手を取れなかった。
オレは、伸ばした手を元に戻して、応じた。
「父さんごめん。オレはまだここで待っていないといけなくなった」
父さんは少しさびしそうな顔をして
「そうか」
と、一言応えた。


少しの沈黙の後
「ならば、先に行ってるぞ。後で母さんと一緒にお前の恋人を紹介させてもらおうか……また、後でな カカシ」
そう言い残して父さんは闇の中へ行ってしまった。





それから、俺はイルカ先生が来るのを待った。
それは、一瞬の時であり永遠の時間でもある。
また、永遠に感じて、刹那のことだったのだろう。


暗闇の中を、待ち人が来る。
ゆっくりと、ゆっくりと
こちらに近づいてくる。
こちらの存在に気づいたのだろうか急に走り出す。
俺は、クスリと微笑みを零して立ち上がり、久しぶりにあの人を見た。
そして近づいてきた彼を抱きしめようとしたらいきなり詰られた。
ひどいです とその拗ねた顔も可愛い。
だから俺は謝ることにした大好きなあなたには笑っていて欲しいから。
そして俺は、そっと抱きしめてもう一度新たに誓いを立てた。



そして俺たちは、共にこの暗闇の先に歩みだす。
二度と離れないと手を固く繋ぐ


たとえどこに辿りつこうともイルカ先生がいればどんな所でもそこが楽園になる
イルカ先生の隣が俺の居るべき場所。


やっと帰ってこれた
彼さえいればこの先に不安なんて何もない。



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