我慢しないで





任務から帰ったカカシの全身から甘い香りがしていた。
そして、いつもより硬い表情。イルカを見つめる視線の奥に欲情の色が揺れる。
任務後の昂ぶりを抱えて貪るように求められた夜は少なくはないけれど…今夜のは少し違う。
「お帰りなさい」
出迎えたイルカが伸ばした手をカカシは軽く振り払った。
「しばらく一人にして」
「カカシさん?」
イルカの呼ぶ声にも応えずに、寝室へと入ったカカシはその扉を閉ざそうとした。
すかさずカカシの手を掴みその動きを止めさせたイルカを見返してくる色違いの瞳。
熱い吐息からもむせ返るほどの甘い香りが漂ってくる。カカシを苛んでいるのはこの匂い。いや…匂いの元になっている薬。
上忍ともなれば、あらゆる耐性を身に着けている。通常ならば薬も毒もほとんど効かない。
「あなたにこれほど効き目が出るなんて…」
イルカは溜息混じりに呟いた。任務中に何があったのかは知らない。
しかし、カカシが強い催淫効果をもつ薬に侵されているのはわかる。
カカシほどの上忍でも抑えきれないほどの効力。敵方が何の目的でそれをカカシに使用したのかはわからないけれど。
カカシは暴発寸前の欲求を抱えている。それなのに…イルカを拒絶するなんて。
自らの意志で望む時ならば、イルカが抗おうとも容赦はしないカカシがイルカを遠ざけようとしている。
薬による熱が鎮まるまで…イルカを傷付ける危険が去るまでと。体内から沸き起こる欲と一人闘おうとしているカカシにイルカは欲情した。
「俺がいるのに…一人で耐える必要はないでしょう?」
「今夜は駄目です。手加減なんて絶対にできない」
カカシは苦しげに眉根を寄せて訴える。
その表情にゾクリと肌を粟だたせるイルカの方がどうかしているのかも知れない。
「じゃあ…カカシさんに一つ枷をつけてあげます」
いつもの清廉さからは想像もつかないほどの色香を纏ったイルカの微笑にカカシは息を呑む。
「どんな…?」
強力な媚薬に侵され、暴走しかねないカカシをどんな枷で抑え込もうと言うのか?
「俺を愛してますか?」
今さらすぎる質問だ。聞くまでもなくわかっていること。しかし、まっすぐに見上げてくる漆黒の瞳はカカシに応えを求めている。
「愛していますよ」
カカシの返答にイルカは満足気な笑みを浮かべた。
「明日が何の日か知っていますよね?」
それも当然過ぎる質問だ。明日がイルカの誕生日だから、カカシは十日かかる任務を一週間で終わらせてきたのだ。
そして、何とか明日までにこの忌まわしい薬の呪縛を解き、イルカを祝ってやりたいと思っているのに。
「カカシさん、任務に出る前に聞いてくれましたよね?」
この任務に発つ直前だった。
『誕生日には何が欲しいですか?』
カカシはそう尋ねてきた。即座には思い付かなかったイルカが考え込んでいると、
『オレが帰るまでに考えておいて下さい』
カカシは言い置いて出て行ったのだ。あれからずっと考えたけれど、今のイルカには欲しいモノなど見当たらなくて。
それだけ満たされているのだと…カカシが戻ったら伝えようと思っていた。
しかし。欲しいモノを見つけた。激しく欲を渦巻かせる今のカカシが欲しい。
「今夜のあなたを俺に下さい。条件は…」
イルカは口許を妖しく吊り上げた。あまりに妖艶な表情にカカシがヒュッと喉を鳴らす。
「俺が触れてと望むまで…カカシさんは俺に触れないこと」
代わりに俺があなたに触れる。猛る熱を鎮める為に。あなたの欲を吐き出させる為に。
瞳に淫靡な色を宿してカカシを見上げる。今夜だけはカカシに拒絶されても引き下がる気はない。
「誕生日のプレゼントですから…俺のしたいようにして構いませんよね?」
そう言ってイルカは、立ち尽くすカカシの前に膝まづいた。
慣れない手付きでカカシの下衣を寛げる。それをスルリと引き下ろすと露になった肉欲に躊躇なく唇を寄せた。
チロリと差し出した赤い舌先で硬く上向いた雄の先端を掠め、すでに溢れはじめていた透明な先走りを掬い上げるように舐めとる。
「イルカせんせ…」
吐息混じりに名を呼ぶカカシを上目遣いで覗けば、その表情は恐ろしいほどに艶めいていた。
「美味しいです。今夜はたくさん下さいね?誕生日なんですから」
これはプレゼントなのだから拒絶しないで。カカシを煽るかのようにそんな台詞を吐きながら、イルカは熱塊に両手を添えた。
根元を握り込みつつ、先端をパクリと咥えた。軽く吸い上げながら伸ばした舌で裏筋をなぞる。
「くっ…」
薬の効果でいつもより数倍も敏感になっている性器に施される口淫。
恍惚とした表情でカカシの猛りを咥え込むイルカを見下ろすカカシの欲が加速する。
「我慢なんてしないで下さい」
そう言ったあとでイルカはまたカカシ自身を咥え、ぐっと喉奥まで呑みこんだ。
「ちょっと…イルカせんせ…っ」
結い上げられたイルカの髪をクシャリと握ったカカシから余裕のない声が漏れる。
まるでイルカまでが媚薬に侵されているようだ。常ならば、僅かなことにも羞恥を募らせてしまうのに。今夜は何故か大胆になれた。
大きく膨らんだ肉塊を深く呑み込んだイルカが苦しげに眉間に皺を寄せる。
チュブチュブと淫猥な水音が響き、口端からは唾液と欲汁が混じり合った粘液が零れている。
淫らなイルカの姿がカカシを煽る。それを承知でイルカは痴態を晒しているのだ。
「イルカせんせっ…離して」
差し迫った吐精感にカカシはくぃと腰を引いたが。イルカは咥えたまま離さなかった。
イルカの咥内で熱い粘膜に包まれた肉欲がドクリと脈打つ。直後、勢いよく放たれた精を咥内に受け止めコクリと喉を鳴らして嚥下する。
「飲んだんですか…?」
「はい。全部もらうって決めたんです。一度くらいじゃ全然足りないでしょう?」
微笑んだイルカがカカシの手を引く。ベッドへとカカシを誘ったイルカは
「全部脱いで下さいね」
そう言いながら自らも着ていたものを脱ぎ捨ててゆく。全裸で倒れ込んだベッドの上で。イルカはカカシの肌に舌を這わせはじめた。
それはいつもカカシがイルカに施す愛撫を模倣した動き。首筋から鎖骨を辿り、胸元へと滑る舌先。
時折チュッと肌を吸い上げるところまでも真似ている。
カカシの中心で、一向に力を失わないまま上向く猛り。イルカは右手でソレを握り込んだ。
強弱をつけて扱きながら、時折指先で先端を掠める。溢れ出す欲汁が絡んで淫猥な音が響く。
身体を下へとずらしたイルカは、再びカカシの雄を咥えた。
「ん…ぅ…」
鼻先から喘ぎにも似た吐息を漏らしながら、嬉々としてカカシを咥え込むイルカのなまめかしい表情にカカシの視線がそそがれる。
カカシが感じているのを確かめるように時折、上目遣いにカカシを伺い、綺麗な顔を快楽に歪んでいることに満足する。
同じ性を持つがゆえに猛りきったモノのどこがより敏感かがわかるのが嬉しい。
唇と舌と…咥内の柔らかな粘膜と。持てる全てを駆使してカカシに奉仕するイルカ。
そう。カカシはイルカだけのもの。滴る蜜の一滴さえ、誰にもやらない。
「イルカ…ッ…」
唸るようにイルカの名を呼んでまた精を溢れさせるカカシ。
飲みきれず僅かに零れた精をも、指先で掬い取ってぺろりと舌にのせる。
「もっと…でしょう?」
そう囁いたイルカはカカシの精に濡れた指先を自らの後ろに伸ばした。
触れてと望むまで触れないで。そんな言葉の枷でカカシを縛ったのはイルカだ。本当はカカシに触れて欲しいけれど…まだ言わない。
見つめるカカシの目の前でイルカは自らの秘孔をほぐしはじめた。
いつもなら、カカシが丹念に施してくれる行為。自分でするのは初めてかもしれない。
「ん…ふぅ…っ…」
まるで見られながら自慰をしているみたいだ。そそがれるカカシの熱い視線が肌を刺す。
ヒクヒクと蠢く内襞は、もう充分にカカシを求めている。自分の指の拙い動きがもどかしくてならない。
イルカは指を引き抜くとカカシの上に跨がった。
「カカシさんは動かないで下さいね?」
念を押すように呟いて、カカシの肉欲の先端を蕾に添える。
慎重に腰を沈め、カカシを呑み込んでゆく。互いの粘液が充分に絡んでいるからだろう。ほとんどほぐしていない秘部にも痛みはない。
強烈な質量を受け入れた圧迫感も、快楽への序章だと知っている身体。
「んあっ…いぃ…っ」
思わず漏らした喘ぎ。カカシの引き締まった腹に両手を付いてゆっくりと腰を落とす。
互いの熱が混ざり合って焼けるような痺れが内壁にはしる。
「イルカせんせの中…キツい…」
微かに腰を突き上げようとするカカシをイルカは艶めいた目で制した。
「動いちゃダメ…です…俺が自分で…挿れ…るっ」
カカシの猛りを最奥まで導く為、ユラユラと腰を揺らす。
根元まで呑み込んだ瞬間にイルカは大きな息を吐き、しばし動きを止めた。
「動いてくれないの?」
多少の余裕を取り戻したカカシに意地悪く急かされて。イルカはたどたどしく動きはじめた。
常に主導権を握ってきたのはカカシ。受け身のイルカは与えられる快楽に全てを委ねてきた。
イルカの稚拙な動きではカカシは感じきれないかもしれない。そんな不安を滲ませてカカシを見やる。
「カカシ…さん…気持ちいい、ですか…?」
「よすぎておかしくなりそ…」
吐息混じりに掠れたカカシの声。もっと感じて欲しくて…もっと悦んで欲しくて、イルカは懸命に腰を振った。
同時に自らの熱も高まってゆく。カカシの肉欲に搦みついた秘肉からズチュッと恥かしい音が漏れる。
二度の吐精にも一向に硬度を失わないカカシの雄が内襞に擦れて。
「ああっ…あっ…ん…っ…」
抑えきれない喘ぎが繰り返し漏れる。最奥の最も感じる一点にカカシを導きたいと思うのに、うまくできない。自分の拙さがもどかしくて目尻に涙が浮かぶ。
もう限界だと思った。カカシに触れて欲しい。
二度吐き出したことでかなり落ち着いたらしいカカシが口許に微かな笑みを浮かべてイルカを振り仰ぐ。
「も…触って…動い…て…」
「解禁?」
息を弾ませて、途切れ途切れに強請った声にフッと目を細めたカカシがイルカの腰を掴み、激しく突き上げた。
「やぁっ…ああ…ぁっ」
比類なき正確さでイルカの求めていた一点を突かれて身体がのけ反る。
「媚薬より、あなたの方が強烈にキましたよ」
そんなカカシの呟きが嬉しかった。
「全部…俺の中に吐き出して…っ…」
そう…我慢することなんてない。カカシを受け止めることでこんなにも満たされる心と身体。
「大丈夫。イルカ先生のおかげで楽になったから。お礼にたくさん気持ちよくしてあげる」
激しく揺さぶられるイルカの耳に届いた声にこくりと頷いて。イルカは愛される喜びに身を任せた。



誕生日の朝。イルカはベッドから起き上がれなかったけれど。
すっきりとした顔で朝食を運んでくれたカカシにたっぷりと甘えて過ごした。
「たまにはあんなイルカ先生もいいね」
明るい陽射しの下でそんなことを言われて、イルカは耳朶までも朱に染める。
思い出すととてつもなく恥かしいけれど…でも。
「たまに…ならアリです」
小さく小さく呟いた声に笑み崩れたカカシがふわりと抱きしめてくれた腕の中でイルカはそっと瞳を閉じた。






小部屋で湧いた萌えネタより。
無理矢理イル誕に絡めてみました(笑)
読んでいただきありがとうございました。

by 飛燕様 談


素敵お話しをありがとうございましたvv

3人で同じお題のお話を書きましょう物語です♪


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